3つ目の逆極性保護方法は、直列P-FETを使用することです。FETは最も高価なソリューションですが、コンバーターのコストに比べれば高過ぎるということはありません。FETにはPチャンネルMOSFETを使用する必要があります。それ以外のFETはこのソリューションとして使用できません。最大ゲート電圧VGSは、最大電源電圧または逆電源電圧より高くなければならなりません。または、FETはRDS,ON抵抗が極めて低いものでなければならず、約50mΩが部品コストと効果の点から妥協できる限界です。電源を正しく接続すればFETはフルバイアス状態になり、入力電流が1Aでも電圧降下は50mVに止まります。
3種類の異なる逆極性保護方法の違いを確認するために、12Wコンバーターを全負荷状態で使用して測定を行いました。入力電圧は、1.5Aの公称入力電流を得ることのできるワーストケース値9Vです。表1から分かるように、P-FETソリューションの効率は、逆極性保護を行わない回路とほとんど同じです。
シャントダイオードなしの過電流保護(フェイルセーフ)デバイスとして使用するか、シャントダイオード付きの逆極性保護デバイスとして使用するかに関わらず、入力ヒューズは、通常動作時にワーストケース入力電流が流れても切れないように選ぶ必要があります。ヒューズワイヤは経年劣化するので、ヒューズ定格は、長時間最大入力電流の少なくとも1.6倍としてください。コンバーター起動時の突入電流は動作電流よりはるかに大きいので、ヒューズが誤って切れてしまわないように、ヒューズは遅延タイプ(スローブロー)のものを選ぶ必要があります。電流定格の大きい遅延動作型ヒューズを選ぶということは、逆極性状態が生じた場合に備え、ダイオードはその電流を流すことのできるサイズのものでなければならず、また、電源はヒューズを速やかに溶断させることができるだけの電流を供給できなければならないことを意味しています。
ヒューズは1回しか使用できません。誤って電源を逆に接続してしまった場合、コンバーターを再度使用できるようにするには、ヒューズを交換する必要があります。メンテナンスチームが異常原因を特定するまで、回路を電源から完全に遮断したままにする必要がある場合これは利点となり得ますが、他の多くのアプリケーションでは、耐故障性アプリケーション(自動回復)にすることが望まれます。従来型ヒューズに代わる方法は、ポリマーPTCヒューズ(PPTC)などのリセット可能な保護デバイスを使用することです。これは、温度の上昇とともに抵抗が増大する正の温度係数(Positive Temperature Coefficient:PTC)の抵抗と同様のデバイスです。異常状態下では、PPTCヒューズの温度は内部の粒状構造が溶解するまで急速に上昇します。溶解すると抵抗が非常に大きくなり、最小保持電流を除いてコンバーターへの電源を効果的に遮断します。電源が遮断されるとデバイスの温度が下がり、自動的にリセットされます。
(次の記事を読む)
⇒「DC-DCコンバーター活用講座」連載バックナンバーはこちら
※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.