最初に、図2に測定回路を再掲載する。
図3に「安定化電源」と「単1形乾電池×2個」を使い、デカップリングコンデンサーを付けた場合で、1回しか変換しない結果を示す。この結果を図1と比較すると、デカップリングコンデンサーの効果が分かる。
「安定化電源」の場合、最大誤差が+31.82LSB、最少誤差が−22.36LSB、「単1形乾電池×2個」の場合、最大誤差が+30.73LSB、最少誤差が−46.27LSBとなり、図1の何も対策を行わない場合(最大誤差が+35.22LSBと+35.96LSB、最少誤差が−51.78LSBと−77.97LSB)に比べれば、かなり改善されている。だが、それでも実用には耐えられない誤差である。
この実験の結論として「デカップリングコンデンサーだけでは、ノイズを除去することはできない」といえる。
図4に「安定化電源」と「単1形乾電池×2個」を使い、デカップリングコンデンサーを付けない場合で、変換結果を平均化した場合を示す。ここで初めて平均化の効果を確認することになる。
「安定化電源」の場合も「単1形乾電池×2個」も、誤差がマイナスになっている。これは、電源に依存しない現象である。そのため、マイコンが平均化を行うプログラムを実行しながら変換を行ったことで、マイコンそのものが何らかのノイズを出し、また、そのノイズを吸収するデカップリングコンデンサーがないためにノイズの影響が残り、誤差がマイナス側に偏ったことが推測できる。
一方、誤差の値を図1と比べると、絶対値は小さくなっている。これにより、平均化には誤差を小さくする効果が認められるといえる。しかし、これでもまだデータシートに記載されているスペック内には収まらない。
図5に「安定化電源」と「単1形乾電池×2個」を使い、デカップリングコンデンサーをスペック通りに付け、変換結果を平均化した場合を示す。図1と比べると、デカップリングコンデンサーと平均化の両方を行った場合の効果が分かる。
「安定化電源」の場合、最大誤差が+3.08LSB、最少誤差が−3.36LSB、「単1形乾電池×2個」の場合、最大誤差が+3.24LSB、最少誤差が−3.24LSBとなる。図1の何も対策を行わない場合(最大誤差が+35.22LSBと+35.96LSB、最少誤差が−51.78LSBと−77.97LSB)と比べれば、大幅に改善されており、データシートに記載されているスペックの範囲に入ることが分かる。
結果として、「デカップリングコンデンサーをスペック通りに付けて、変換結果を平均することにより、データシートに記載されているスペックを満足する結果が得られる」といえる。
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