すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。前回に引き続き、マイコンに搭載されているサンプル&ホールド型A-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。
前回に引き続き、マイコンに搭載されているサンプル&ホールド型A-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。
今回は、具体的にハードウェア対策とソフトウェア対策を施した場合のA-Dコンバーターの変換誤差を測定し、前回解説した対策の効果を確認する。また、その他にも、オフセット誤差やゲイン誤差の補正の方法および、A-Dコンバーターを使用する際の注意事項も合わせて解説する。
では、いよいよ実際のマイコンのA-Dコンバーターを使って、電圧を測定してみる。ハードウェア対策もソフトウェア対策もしない場合、前回の測定で分かったように、実際の使用には耐えられない測定誤差の結果が出ている(図1)。しかし、これはマイコンのA-Dコンバーターの性能が悪いわけではなく、使用環境のノイズの影響である。そこで、今回は、ハードウェア対策の有無に対して、ソフトウェア対策(=平均化対策)を行わない場合と、行った場合について解説する。
実験に用いるハードウェアは、比較的ノイズの多い「安定化電源」で動作するものと比較的ノイズが少ない「単1形乾電池×2個」で動作するものの2種を用意し、それぞれハードウェア対策としてデカップリングコンデンサーを付けたものと、付けていないものを用意する。そして、この4種のハードウェアそれぞれで、ソフトウェア対策の有効性を確認するため、A-Dコンバーター変換を1回しかしない場合と、複数回変換してデータを平均化する場合の2通りを実験する。実験回数は、前回に実施した2回と、今回実施する6回(=表1参照)を合算して、合計8回になる。
電源 | デカップリングコンデンサー | 平均化処理 |
---|---|---|
安定化電源 | コンデンサーなし | 1024回平均 |
コンデンサーあり | 平均なし(1回測定) | |
1024回平均 | ||
単1形乾電池×2個 | コンデンサーなし | 1024回平均 |
コンデンサーあり | 平均なし(1回測定) | |
1024回平均 | ||
なお、平均化の変換回数は1024回とする。A-Dコンバーターの変換結果を単純に1024回累積し、最後に1024で割り算する。
測定の順番としては、まずはハードウェア対策の効果を確認するために、デカップリングコンデンサーを付け、平均化を行わず変換1回の条件で測定する。
次に、ソフトウェア対策の効果を確認するために、デカップリングコンデンサーを付けない状態で、複数変換による平均化を行う。
最後に、ハードウェア対策(=デカップリングコンデンサーあり)とソフトウェア対策(=複数変換による平均化を実施)の両方を施した場合の効果を確認する。
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