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デルタ-シグマADC内のノイズの概要アナログ設計のきほん【ADCとノイズ】(1)(2/3 ページ)

» 2019年02月01日 11時00分 公開

ADCの固有ノイズ

 ADCの総ノイズは、量子化ノイズと熱ノイズという2つの主なノイズ源に分けることができます。これら2つのノイズ源には相関関係がないため、次の式1に示すように、二乗和平方根(RSS)方式でADCの総ノイズ、NADC, Totalを算出できます。

式1

 ADCの各ノイズ源には、ADCの固有ノイズの低減方法を把握する上で重要な特性があります。

量子化ノイズ

 図3は、ADCの理想的な伝達関数(オフセット誤差やゲイン誤差の影響を受けない)のプロットを表しています。この伝達関数は最小入力電圧から最大入力電圧まで水平方向に伸び、縦軸に沿ってADCコードの総数に応じたステップ数に分割されています。このプロットには16個のコード(ステップ)があり、4ビットADCを表しています(注:ストレート・バイナリ・コードを使用しているADCの伝達関数は、第1象限のみを含む伝達関数になります)。

図3:ADCの理想的な伝達関数

量子化ノイズは、無限個のアナログ電圧を有限個のデジタルコードにマッピングするプロセスから発生します。結果として、単一のデジタル出力は式2で定義されている最下位ビット(LSB)の1/2だけ異なるアナログ入力電圧に対応することができます。

式2

 FSRはフルスケール範囲の値(ボルト単位)、NはADCの分解能を表しています。

 この量子化されたAC信号に対するLSB誤差をマッピングすると、図4に示すようなプロットが得られます。量子化された「階段」状のデジタル出力と滑らかな正弦波アナログ入力の相違点に注目してください。これら2つの波形間の差異を抽出して結果をプロットすると、図4の下側に示す「ノコギリ」状の誤差が得られます。この誤差は±1/2 LSBの範囲内で変動し、ノイズとして結果に現れます。

図4:アナログ入力、デジタル出力、LSB誤差の波形

 DC信号の場合も同様に、量子化に関連する誤差は入力信号の±1/2 LSBの範囲内で変動します。ただし、DC信号には周波数成分がないため、実際の量子化「ノイズ」はADC出力のオフセット誤差として現れます。

 最後に、量子化ノイズに関して明白でありながらも重要なのが、入力におけるLSB未満の変化をADCが区別できないため、ADCの分解能を上回るものは測定できないという点です。

熱ノイズ

 アナログ−デジタル(またはデジタル−アナログ)変換プロセスの副産物である量子化ノイズとは異なり、熱ノイズは全ての電子部品に固有の現象であり、導電体内部の電荷の物理的な動きによって生じます。そのため、熱ノイズは入力信号を印加しなくても測定できます。

 ADCの熱ノイズはADC設計の結果であることから、エンドユーザーがこの熱ノイズに影響を与えることは、残念ながらできません。以降、この記事では量子化ノイズ以外の全てのADCノイズ源をADCの熱ノイズとして扱います。

 図5は、典型的にはガウス分布を有する時間ドメインでの熱ノイズを表しています。

図5:ガウス分布に従う時間ドメインでの熱ノイズ

 ADCに固有の熱ノイズに影響を与えることはできませんが、ADCの量子化ノイズのレベルはLSBサイズに依存しているため、それを変化させることができます。ただし、この変化の有意性を定量化する方法は、「高分解能」と「低分解能」、どちらのADCを使用しているかによって異なります。では、LSBサイズと量子化ノイズを有効活用する方法をよりよく理解できるように、これら2つの用語を簡単に定義していきましょう。

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