真空管を使ったアナログ回路によるファンクションジェネレーターは1950年代はじめに作られるようになった。記録によって確認できる最も古いファンクションジェネレーターは1951年に発行されたHEWLETT PACKARD JOURNALに掲載された「Model 202A Low Frequency Function Generator」である。1960年代にはアナログ方式のファンクションジェネレーターが多く作られるようになり、日本国内でもエヌエフ回路設計ブロックが真空管式のファンクションジェネレーターを1961年に発売している。
アナログ方式のファンクションジェネレーターは三角波からパルス波や正弦波を作り出す仕組みになっている。
アナログ方式ファンクションジェネレーターの基本構成を図3に示す。A1とRf、Cfとで積分器をA2とR1、R2とでヒステリシスコンパレーター(正帰還アンプ)を構成している。
動作開始時に,方形波出力が+VSになっていたとすると、A1出力の三角波は−VT方向へ一定速度で降下する。A1出力が−VT(=−VS×R1/R2)になるとA2出力の方形波は−VSに反転し、A1出力は−VTから+VT方向へ上昇する。こうして連続的に三角波と方形波が得られる。A1の入力インピーダンスが高くて、かつ直流ドリフトが小さく、Cfの絶縁抵抗が大きければ、かなり低い周波数まで発振させることができる。
発振周波数はRfにVSが印加されると、I=VS/Rfという定電流が流れる。このときA1の出力が−VTから+VTまで変化する時間tは、t=(2VT×Cf)/I=(2VT×Cf×Rt)/VSとなる。ここでR1=R2とすると、VT=VSになる。
したがってt=2Cf×Rfとなる。1kHzを発振させるにはCfに0.01μFを使用すると、t=0.5ミリ秒(半周期)なので、Rf=t/2Cf=25kΩになる。
ファンクションジェネレーターの基本部分は日本庭園にある鹿威し(ししおどし)とよく似ている。鹿威しは水が竹で作った上部にたまるようにできており、水の重みによって竹で作られた鹿威しが傾き、竹筒の中に入っていた水が流れて、元に戻る仕組みになっている。この動作を繰り返し行うため、連続的に竹筒が石をたたくことになる。積分回路にあるコンデンサーが水の溜まる部分と考えれば鹿威しがアナログ式ファンクションジェネレーターの基本部分とよく似ていることが理解できる。
正弦波は,折線近似回路に三角波を通して生成する。図5の回路において、三角波が基準電位(E1〜E6)を超えるに従ってダイオードが順次導通する。導通するとR2からR7の抵抗が順次R1の負荷となり、三角波の振幅が大きいほどR1の負荷抵抗が小さくなる。三角波の振幅が大きいほど折線近似回路の出力振幅が小さくなり、三角波が正弦波に近づくことになる。
アナログ式ファンクションジェネレーターは安定した周波数の発振を行う水晶振動子を基準に波形発生していないため、高い周波数確度を得るには周波数カウンターと組み合わせて使わなければならない。水晶振動子を基準にした周波数シンセサイザーを組み込んだアナログ式ファンクションジェネレーターは一時存在したが、高額なため現在は販売されなくなっている。
また、発生波形はアナログ回路によって作っていたため、複雑な波形を発生することも難しい。これらの欠点があるため、現在では安価に作れるようになったDDS方式ファンクションジェネレーターに切り替わってきている。
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