ノイズフリー分解能と同様に、ブリッジに必要な入力換算ノイズを判断するためには、システム仕様についていくつかのことが分かっていれば十分です。その最大出力信号が分かっていなければなりませんが、これは5mVです。また、最大信号に相当する重量も分かっていなければなりませんが、これは1kgです。最後に必要なのは最小適用重量ですが、これは50mgです。このようなわずかな情報があれば、式4を使用して、ADCが250nVのピーク・ツー・ピーク信号を分解できる必要があることが分かります。
入力換算ノイズを使用するメリットの1つは、分解能損失の計算を気にしなくてもいいことです。その代わりに、計算値をADCの入力換算ノイズ表と直接比較し、設定のどの組み合わせが求めるノイズ特性以下になるかを判断できます。
図4は、簡略版のADS124S08の入力換算ノイズ表です。250nVPP以下の入力換算ノイズになるゲインとデータレートの設定の組み合わせが強調表示されています。
図4の結果と図3のノイズフリー分解能を使用した分析とを比較すると、図4ではシステム要件を満たすADS124S08設定の範囲がすべて得られることが分かるでしょう。図3では決まったデータレートでの値しか得られず、データレートが変われば計算し直す必要があるため、システム仕様の変更に簡単には適応できません。
式5に示すように、最大適用重量を5kg、最小適用重量を500mgに増やし、ブリッジの最大出力信号は5mVのままにするとします。
簡単な計算で、システムノイズ要件が500nVPPに緩和されたことが分かります。これにより、利用可能なデータレートとゲインの組み合わせが増えます。図5は、これらの緩和されたシステム仕様により、前提条件のノイズ特性を達成しながら、サンプリングの速度を上げるか(最大20SPS)ゲインを下げる(最小4V/V)ことが可能になることを示しています。
代わりに、重量計システムにさらに分解能が必要になったらどうなるでしょうか。例えば、5kgの最大適用重量の要件はそのままで、最小適用重量を最初の例の50mgに戻すとします。最大ブリッジ出力は同じまま(5mV)にしますが、50nVPPの入力換算ノイズが要求されることになります。これは非常に低い値です。図4と図5を見ると明らかですが、このレベルの性能を得られるADS124S08のデータレートとゲイン設定の組み合わせはありません。しかし、どのADCにでも簡単にこの同じ分析を行えるため、単にノイズ特性がより高い製品を選択すればよいだけです。
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