今度は、ADCのサンプルレートまたはアンチエイリアスフィルターのカットオフ周波数を変更したくなったとしましょう。これは、システムのENBWにどのように影響するのでしょうか。直感的には、既に見てきたように、カットオフ周波数が小さいフィルターがENBW計算において支配的であるのは当然と思われます。確かに、一般的には当たっています。
このことを説明するため、表2に、『ADS1262』の利用可能なデジタルフィルター出力データレートと対応するシステムENBWを、幅広いアンチエイリアスカットオフ周波数に対してまとめています。また、実質的にADCのカットオフ周波数の働きをする3dBポイントも示します。
表2では次のように状態を色分けして表しています。
式2と式3で表される条件のうちの1つが正しいとすると、システムENBWと個々のフィルターのカットオフ周波数との相関関係により、複雑な積分を行わなくてもシステムのENBWの概算を求めることができます。
F3dB (ADC)がfc (AA filter)に比較的近いなど、どちらの条件も正しくない場合は、このセクションで述べてきた積分を行う必要が出てきます。それだけでなく、これらの条件は、フィルター段をいくつ追加しても、そのフィルターのカットオフ周波数がADCまたはアンチエイリアスフィルターのものよりずっと大きい限り、一般的に当てはまると考えられます。このような場合は、フィルターのENBWを計算しなくてもよいため、解析が簡単になるでしょう。
次回(第6回)は、内蔵および、外付けのアンプをシグナルチェーンに追加することで、デルタ-シグマADCのノイズについて引き続き考察します。
以下は、デルタ-シグマADC内のENBWをより良く理解するうえで重要なポイントをまとめたものです。
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