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高精度デルタ-シグマADCの 有効ノイズ帯域幅(ENBW)の理解【算出方法】アナログ設計のきほん【ADCとノイズ】(5)(2/4 ページ)

» 2019年07月17日 11時00分 公開

次は、ADCのSINCフィルターの応答をプロット

 アンチエイリアスフィルターの周波数応答をしっかり把握したら、次のステップはADCのSINCフィルターの応答を明確にすることです。この例では、TIの低ノイズ、32ビットADC『ADS1262』を選択します。この解析はどのデルタ-シグマADCにもおおむね当てはまります。この場合、『ADS1262』のSINC4フィルターを60 SPS(サンプル/秒)のデータレートで使用することにします。図3に、これらの設定によるフィルターの周波数応答を記したデータシートのプロット図を改めて作成します(『ADS1262』設定ツールを使用)。

図3:『ADS1262』のSINCフィルター応答 - 線形周波数スケール、fmax=300Hz

 この2つのプロット図の重要な違いは、SINCフィルターのプロット図(図3)には線形の周波数軸が使われ、アンチエイリアスフィルターのプロット図(図2)には対数の周波数軸が使われていることです。これは、ほとんどのデルタ-シグマADCではデータレートが低く、一般に周波数ディケードを複数表示する必要がないためです。残念ながら、この選択をしたために2つのフィルターを同じプロット図に集約する作業が複雑になります。

 さらに、SINCフィルターの応答は無限に繰り返されることを思い出してください。図3のように300Hzで終わりというわけではありません。

 この2つの問題を考慮に入れ、周波数範囲を大幅に拡大してSINCフィルターの応答を対数軸にプロットした場合、図4に示すようにその結果はほとんどのADCデータシートにある標準的なプロット図とは全く違ったものになります。

図4:『ADS1262』のSINCフィルター応答 - 対数周波数スケール、fmax = 10MHz

 図4のように、対数軸を10MHzまで拡大したプロット図では、フィルター応答の繰り返しを表す高周波数のピークがいくつも見えてきます。なぜこれが重要なのでしょうか。この繰り返しの結果、SINCフィルターの周波数応答曲線の積分によって得られるENBWは無限大になります(数学的に見ると、SINCフィルターの積分は無限大に発散します)。

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