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SiC登場で不可避な電源回路シミュレーション、成功のカギは「正確な実測」ダブルパルステスターで高精度なデバイスモデルを(2/5 ページ)

» 2019年09月11日 11時11分 公開

I-V特性測定が課題

 できる限りトラブルは回避したい。そこでSiCパワーデバイスやGaNパワーデバイスを採用する一部の電源技術者は、すでに回路シミュレーションを活用し始めている(図2)。

図2:電源回路設計の将来像 出典:キーサイト・テクノロジー
SiC/GaNパワーデバイスの登場によって、電源回路設計でもシミュレーションの活用が必須になると見られている。まずは、ダブルパルステスターやネットワークアナライザーなどを使ってデバイスを測定し、その結果をモデリングツール「IC-CAP」に入力し、デバイスモデルパラメーターを抽出する。その一方で、パワー・デバイスを実装するプリント基板を「PathWave ADS Momentum」で解析して、寄生成分などを検証する。それらを回路シミュレーター「PathWave ADS」に入力して、回路解析を実行する。

 ところが、そうした電源技術者の多くは、「実測値とシミュレーション結果が合わない」という不満の声を漏らしているようだ(図3)。

図3:従来は実測値とシミュレーション結果が合わなかった
従来は、デバイスモデルの精度が不十分だったため、スイッチング波形の実測値とシミュレーション結果に大きなズレがあった。リンギングやオーバーシュートの様子が違ったり、時間のズレやスルーレートのズレが発生したりしていた。

 なぜ、合わないのか。高精度な電源回路シミュレーションを実行するには、3つの要素が欠かせない(図4)。第1の要素は、SiC/GaNパワーデバイスの動作を記述した高精度なデバイスモデル。第2の要素は、そのデバイスモデルのパラメーターを抽出するために必要な高精度、広範囲な測定技術。第3の要素は、パワーデバイスを実装するプリント基板の電気回路定数を3次元電磁界シミュレーターで抽出することである。

図4:正確なデバイス・モデルを作成するには、測定技術が重要に
パワーデバイスを広範囲で正確に測定しなければ、高精度なデバイスモデルパラメーターは作抽出できない。パワーデバイスのI-V特性の大電力領域や、オン時のC-V特性などを正確に測定する必要がある。

 第1の要素については、すでに高精度なデバイスモデルが開発され、それを利用できる状況にある。第3の要素については、市販の3次元電磁界シミュレーターを利用すれば問題ない。必要になるプリント基板の電気回路定数を抽出できる。

 実測結果とシミュレーション結果が合わない最大の原因は第2の要素、つまり測定技術にある。具体的には、SiC/GaNパワーデバイスに関する2つの測定技術が課題になっている。1つは、I-V特性(横軸はドレイン-ソース間電圧、縦軸はドレイン電流)の大電力領域の測定(図5)。もう1つはオン時のC-V特性の測定である。現時点では、この2つの特性を高い精度で測定するのは技術的に困難である。つまり、これらの特性を取り込んでいないデバイスモデルパラメーターを使ってシミュレーションを実行していたため、実測値と合わないという事態を招いていたことになる。

図5:I-V特性の大電流領域を測定できない
従来のパワーデバイスアナライザー(B1505A/B1506A)では、狭いパルス信号を出力できなかったため、パワーデバイスが発熱してしまい、I-V特性の大電力領域を測定できなかった。

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