できる限りトラブルは回避したい。そこでSiCパワーデバイスやGaNパワーデバイスを採用する一部の電源技術者は、すでに回路シミュレーションを活用し始めている(図2)。
ところが、そうした電源技術者の多くは、「実測値とシミュレーション結果が合わない」という不満の声を漏らしているようだ(図3)。
なぜ、合わないのか。高精度な電源回路シミュレーションを実行するには、3つの要素が欠かせない(図4)。第1の要素は、SiC/GaNパワーデバイスの動作を記述した高精度なデバイスモデル。第2の要素は、そのデバイスモデルのパラメーターを抽出するために必要な高精度、広範囲な測定技術。第3の要素は、パワーデバイスを実装するプリント基板の電気回路定数を3次元電磁界シミュレーターで抽出することである。
第1の要素については、すでに高精度なデバイスモデルが開発され、それを利用できる状況にある。第3の要素については、市販の3次元電磁界シミュレーターを利用すれば問題ない。必要になるプリント基板の電気回路定数を抽出できる。
実測結果とシミュレーション結果が合わない最大の原因は第2の要素、つまり測定技術にある。具体的には、SiC/GaNパワーデバイスに関する2つの測定技術が課題になっている。1つは、I-V特性(横軸はドレイン-ソース間電圧、縦軸はドレイン電流)の大電力領域の測定(図5)。もう1つはオン時のC-V特性の測定である。現時点では、この2つの特性を高い精度で測定するのは技術的に困難である。つまり、これらの特性を取り込んでいないデバイスモデルパラメーターを使ってシミュレーションを実行していたため、実測値と合わないという事態を招いていたことになる。
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