今回から「導電性高分子アルミ電解キャパシター」について取り上げます。今回は、導電性ポリマーとはどのようなものかなど、導電性高分子アルミ電解キャパシターの概要を説明します。
前回までは四級塩問題も含めて湿式のアルミ電解キャパシターの構造や使い方の説明をしてきました。併せてその中で寿命を決める因子として電解液の蒸発が大きなウエートを占めていることも説明してきました。
今回から説明する導電性高分子アルミ電解キャパシター*はその電解液を導電性ポリマーに置き換えたものであり、大きなくくりではアルミ電解キャパシターの部類に入ります。
また同じ導電性ポリマーを用いた品種に、タンタル電解の二酸化マンガン(MnO2)を導電性ポリマーに置き換えた派生品種(POSCAPなど)もありますが固有の特徴などがなければ本稿ではアルミ電解を前提にします。
*メーカーによっては“機能性高分子”と呼ぶこともありますが本稿ではJEITA(電子情報技術産業協会)に従って導電性高分子アルミ電解キャパシターと表し、支障がない場合は導電性高分子キャパシター、あるいは高分子キャパシターと表します。なお、導電性ポリマーはノーベル賞(2000年/白川英樹博士ら)の功績対象になった物質です。
アルミ電解キャパシターとは陽極箔にアルミ、誘電体に酸化アルミを用いたもの全体を指し、そのグループは電解質の種類によって次のように分類され、主な種類は図1の2つのグループに分類できます。
このグループの中で今回は(2)の導電性高分子アルミ電解キャパシターについて説明します。
このキャパシターは誘電体に(1)の湿式アルミ電解コンデンサーと同じ酸化アルミ膜を用いていますので導電性高分子アルミ電解キャパシターも極性を持ち、逆極性では利用できません。
ちなみにバルブ(弁)金属の一種であるタンタルを用いた旧来の“タンタル電解コン”は陽極箔にタンタル箔、誘電体にタンタルの酸化膜、電解質に二酸化マンガンを用いています。
“旧タンタル電解コン”の仕様は図2の特性分布から分かるように導電性高分子アルミ電解キャパシターに重なっています。ただ、“旧タンタル電解”から、燃えにくく、特性の良い導電性高分子アルミ電解キャパシターへの置き換えが進んでいますので、本稿では“旧タンタル電解”は扱いません。
導電性ポリマーとは一時期、話題になった電気を通すプラスチックの類です。導電性のメカニズムは半導体と同様と考えると分かりやすいかと思います。
つまり、ほぼ絶縁性のシリコンの中に極少量のP型やN型のドーピング材(ドーパント)を原子レベルで融合するように拡散させると外部条件によってきわめて高い導電性を得ることができます。
この現象と同様の現象が一部の高分子に起きることが発見され、電解コンデンサーなどに適用されたものが導電性高分子キャパシターと呼ばれるものです。
ポリマー(Polymer)とは複数のモノマー(単量体)が鎖状や網状に結合(重合)した高分子の有機化合物*を指しますが一般的には高分子と同義語として用いられています。
モノマーが複数個結合したものは分子(鎖)と呼ばれます。ポリマーはモノマーが鎖状や網状に結合していますので一部に応力を加えると他の分子鎖は絡まり具合が一層ひどくなり、この現象は強い張力と高い融点といった性質に現れてきます。一般的なプラスチックでは数万から数十万の分子量になります。
本稿では高分子とポリマーは厳密には区別しませんが、キャパシター本体を表す時は高分子と表記し、部品の原材料を指す時はポリマーと表記することにします。
*高分子材料の例:PA(ポリアミド/ナイロン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、など
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