導電性高分子キャパシターの開発の流れを表1にまとめます。
時代 | 概要 | 発明者など | |
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1896 | 湿式アルミ電解コンデンサーの発明 | 湿式アルミ電解の原型 | Charles Pollak |
1950年代初め | 二酸化マンガン(MnO2)を用いた タンタル電解コン*の発明 |
ESRの温度安定性が良く、 σはアルミ電解コンの10倍 |
Bell研究所 |
1973 | 有機伝導体である電荷移動塩TCNQの発見 | σはMnO2の10倍 | A. Heeger F. Wudl |
1975 | 導電性ポリマーの発見(ポリアセチレン)およびドーピング法の開発('78) | PPyやPEDOTのσは金属レベル | 白川英樹、 Alan MacDiarmid他 |
1983 | 電荷移動塩TTF-TCNQを使用したキャパシター発売 | OS-CON | 三洋電機 |
1988 | 初のポリマー電解質(PPy)を用いた キャパシターの発売 |
APYCAP | 日通工 |
1991 | PPy電解質を使用したキャパシターの発売 | SP-Cap(ESRはMLCC並み) | 松下電子部品 |
1993〜1997 | 陰極部をPPyとしたSMD型タンタル電解発売 | NeoCap/POSCAP | NEC/三洋電機 |
1999 | 有機導電性ポリマーPEDT(PEDOT)の発表 | Kemet | |
2001 | PEDOTを用いたアルミ電解コンの発売 | 製造法の簡略化 | Kemet |
2000 | 導電性ポリマーの発見による ノーベル化学賞の受賞 |
白川英樹、 Alan MacDiarmid、 Alan J. Heeger |
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2000〜 | ハイブリッド型導電性高分子キャパシターの発売(固体層に浸透できる液体電解液の開発) | 低リーク電流、自己修復機能、有限寿命 | |
*タンタル自身が熱反応しやすいことに加えて二酸化マンガン(MnO2)を用いた旧来のタンタル電解コンは高温時にMnO2が(4MnO2→2Mn2O3+O2)に分解されて酸素が供給されるために燃焼が持続しますが導電性高分子キャパシターのポリマーは酸素供給量が1/1000程度のために燃焼の可能性は大幅に低下しています。 |
図3に各種電解質の電気伝導度の比較を示しますが導電性ポリマーの電気伝導度が湿式電解液に比べて著しく向上していることが分かります。
(出典:EN.Wikipedia Polymer Capacitor 2020/04/08)
電解コンデンサーに用いられる電解質(液)の最も重要な電気特性は、電気伝導度です。
湿式アルミ電解コンデンサーの稿で説明したように、電解質は陽極上に設けられた誘電体に接触して実質的な陰極を構成しますが誘電体は粗面化された陽極上に設けられています。このような背景から導電性ポリマーには電気伝導度以外にも次のような特性も要求されることになります。
【導電性塩TCNQについて】
三洋電機時代のOS-CONに用いられたTTFーTCNQ錯体は名前にポリが無いことから厳密にはポリマーではありません。TTFーTCNQ錯体を用いたOS-CONは三洋電機がパナソニックに買収された2010年以降に順次廃止されているようです。
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