よく聞かれる質問に、「E-capsはどのくらいの年数もって、どのくらいの数が故障しますか?」というものがあります。これは2つの質問であり、2つの異なる答えが必要です。コンデンサーの耐用年数は、一般に、ESRが2倍になる、あるいはコンデンサーの10%が故障して回路が短絡またはオープンに至るまでにかかる時間です。E-capsに悪影響を及ぼす主な経年劣化現象の1つは、電解質が徐々に乾燥して時間とともに徐々にESR値が上がり、ついには許容できないレベルまで性能が下がることです。
E-capsの寿命はかなり長いので、データシートではエージングプロセスを加速するため、最大のストレスレベルでテストされ規定されています(HASS:高加速ストレススクリーニング)。つまり、標準的な定格寿命は、わずか数千時間かもしれないことを意味しています。実際には、絶対最大ストレス以下のレベルで部品を動作させれば、寿命はかなり延ばすことができます。
以下に示す一連の式は、実際のE-capの寿命を計算するための簡略化した設計ルールを示しています。
ここで、電圧ストレスは
この式のセットから、3つの重要な結論を導き出すことができます。
例えば、コンデンサーの定格が2000時間/85℃で、定格電圧限界の70%に相当するDC電圧の電源内で、動作温度が周囲温度より15℃高いという条件で使われた場合、計算によれば寿命は以下のように延びることになります。
この結果から、電圧を下げて熱ストレスを軽減すれば、コンデンサーの寿命は9万500時間(>10年)以上に延ばすことが可能ということになるでしょう。この例からは、コンデンサーにかかる電圧ストレスを減らし(経験上、平均電圧はコンデンサーの定格電圧の70%を超えてはいけない)、E-capをできる限り低温で動かすことで、信頼性設計を盛り込めることも分かります。
E-capの温度設計を適切に行うことが寿命に最も効果的で、そして、2つの基本的なルールにのっとります。1つ目は、内部発熱は熱ストレスを非常に増やし、リップル電流が高ければ高いほどコンデンサー自身のESRによる内部電力消費が高くなるということです。コンデンサーが古くなるとESRが増し、内部温度が上昇することによってさらに寿命の短縮に拍車が掛かります。信頼性は容量値に依存しないので、大容量コンデンサーのほうが内部発熱が少なく寿命が長くなる可能性があります。それに内部熱を放散するための表面積も大きいと言えます。
2つ目は、E-capsをレイアウトする際にはヒートシンク、トランス、あるいは発熱する半導体部品から離れたところに置き、周囲温度がなるべく低くなるようにするということです。また、シールドのない誘導部品の扱いにも注意が必要です。このような部品は電磁場を放射してコンデンサー層内に渦電流を生じさせ、局部加熱を引き起こす可能性があります。コンデンサーは、インダクターに接触しないように置く必要があります。しかしながら、これらのシンプルなルールは、より小型でより安い電源を製造するための競争において無視されることが多く、そのためにE-capの信頼性は低くなることになります。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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