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セラミックキャパシター(5) ―― 高誘電率系キャパシターの温度特性中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(49)(1/3 ページ)

高誘電率系のキャパシターの温度特性について説明します。この種のキャパシターの温度特性は数式で変化の様子を表すことができません。したがって図表や文章での説明が主体になります。

» 2020年11月27日 09時00分 公開

 今回は前回に引き続いて高誘電率系のキャパシターの温度特性について説明します。この種のキャパシターの温度特性は前回説明した種類1のような直線的な変化ではありませんので数式で変化の様子を表すことができません。したがって図表や文章での説明が主体になります。

 なお、本稿で取り上げる高誘電率系キャパシターの温度特性は規格的には、
 「 JISの種類2/IECクラス2 」 と呼ばれるものです。

*互換性の参考にしていただくためにEIAのクラスII規格も参考として併記します。

セラミックキャパシターの温度特性の発生

 空気キャパシターを除いて誘電体を使用する全てのキャパシターは誘電体の比誘電率εrの温度特性に従って容量の温度特性を持ちます。
 今回説明する種類2のセラミックキャパシターは誘電体にセラミックキャパシター第2回で説明した強誘電体を用いていますので誘電体分子の化合(結合)の変化が容量変化として強く現れます。この特性は使用誘電体材料ごとに特徴があり、JIS規格などではこの特性の様子を後述するいくつかのグループに分けて規定しています。
 実際の製品においてはこの温度変化を添加剤などで調整(キャンセル)しますがキャンセルし切れない成分が図1(a),(b)に示すようなウネリを伴う複雑な温度特性を生じます。図1はEIA規格での区分例ですがJIS規格でも類似クラスでは同様の変化になります。

 また前回説明したように温度変化によって熱応力が生じますので大形チップセラミックキャパシターの使用にあたっては発生熱応力の検討が必要です。

図1:種類2セラミックキャパシターの温度特性の例 (クリックで拡大)

種類2セラミックキャパシター

 種類2キャパシターは、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの強誘電体材料と、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5)、ケイ酸マグネシウム(Mg2・SiO4)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの微量の添加剤で作られています。これらのセラミックス材料は、

  • 非常に高い誘電率(200〜14,000)を持つ。
  • 容量が温度によって非線形に変化する。
  • 印加電圧によって容量は変化する。
  • 容量が経年変化する(エージング効果)。

などの特徴がありますので種類1のキャパシターに対して小型化では勝りますが精度や安定性の面では劣ります。つまり設計時は特性が上記の変動を起こしたと仮定して設計する必要があるということです。
 これらの特徴から種類2キャパシターは主としてバイパス回路、カップリング/デカップリング回路など損失や容量変化が問題にならない箇所に使われます。

 また圧電体の中のごく一部の分野が強誘電体ですのでキャパシターに応力が印加されると圧電効果によってマイクロフォン効果(圧電効果による雑音)を示します。ですから物理的な振動や圧力を避けて使う必要がありますし、樹脂注型処理やコーティング処理においては線膨張係数にも注意が必要です。

表1:種類1と種類2の誘電体の特徴比較
種別 自発分極 εr 材料名
種類1 常誘電体 なし TiO2(二酸化チタン)、CaZrO3(ジルコン酸カルシウム)など
種類2 強誘電体 あり BaTiO3(チタン酸バリウム)など
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