セラミックキャパシターはその材料特性上では数百メガヘルツ〜数ギガヘルツまで使用可能ですがこの周波数帯域になるとキャパシター自体のESL(残留インダクタンス)の影響で自己共振を起こして周波数特性が劣化します。このESLを低減し、本来の誘電体の材料特性を活かすためにいくつかの新しい技術が開発されました。
注)実験的には1608サイズのMLCCで0.2〜0.3nH程度のESLが存在します。この条件下ではキャパシターの材料自体は数百メガヘルツ以上の使用可能周波数特性を持ちながら、例えば10μFの部品としての自己共振周波数は3MHzから4MHzになります。このキャパシターをバイパス用途で使用するなら自己共振周波数以上のノイズはバイパスできなくなります。
図3にフリップチップ品と従来品の比較を示しますが簡単に言えば面積を同一(容量同一)に保ったまま、電極の方向を90度回転させたものです。チップ品の外観は概略1:2の縦横比ですのでこの技術によって幅が2倍、長さが半分になり、ESLやDC抵抗の低減が可能になります。
図3のフリップチップ品では電流通路は短くなりますが電流が部品内を均一に流れるため、インダクタンスとしては長さ以外の要因は低減できません。
図4はそのような観点から、さらなるESL低減を目的にして電極構造を改善したものです。
具体的な内部構造は同一電極板の引き出し電極が交互に並んだ構造になっています。
(+)の電極から流れ込んだ電流は誘電体内部を通って(−)の電極から流出していきますが対向電極へ流れる電流は交互に並びますので磁束は打ち消しあい、相互インダクタンスが減少します。
また、隣接電極へ流れる電流は対向電極よりも短くなりますので本来のESLも低減します。
ただし、見かけはキャパシターアレイですが実際の内部構造は単一のキャパシターになっていますので部品の誤使用には注意が必要です。
注)図中の+と−は直流用という意味ではなく、電極1, 2を区分けする意味です。1層と3層および、2層と4層は見やすくするために対向電極への電流と隣接電極への電流を分けて描いてあります。ですが実際には重なって流れます。
数百メガヘルツ以上の信号線に重畳されるノイズを安定電位へバイパスさせるにはディスクリート形のLCローパスフィルターでは対処できず、分布定数形のフィルターを設けますが形状や価格の面では利点がありません。
貫通形キャパシターはこのような用途の高周波用フィルターを構成するものでリード線がなく極端にESLが低い立体構造のキャパシターを利用して図5のような構造でシャシーへノイズをバイパスします。
図5の構造を持つ貫通キャパシターを機器の金属製シャシー(F.G.)にねじ止めし、キャパシターのリード線を介して外部信号を引き込みます。適切に接地された金属シャシーはそれ自体が一種のシールドですので機器内外の電磁波を介しての干渉は遮断され、引き込み用リード線はキャパシターによって高周波的に安定化されます。この貫通キャパシターのネジ部はキャパシターの接地電極になっていて接地インピーダンスも低減でき、適切な設計を施せば1GHzまではフィルタリングできると言われています。この種の貫通キャパシターは時として「EMIフィルター」に分類される時があります。
ただし構造図からも分かるようにリード線などに熱や機械的な過大ストレスを与えると周辺電極との絶縁が壊れます。そのため取り扱いには次のような注意が必要です。
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