過去2回にわたってセラミックキャパシターの温度特性について説明してきました。今回は最近のセラミックキャパシターに用いられる新しい構造について説明したいと思います。
MLCC(多層セラミックキャパシター)はセラミックベースに電極を印刷し、端面部で印刷電極を実装用外部電極に接続する構造を採用しています。
MLCC量産の初期は、1200〜1400℃という高い焼結温度に耐えられる酸化しにくい材料ということで印刷電極に銀パラジウム(AgPd、通称“銀パラ”)、外部電極の下地電極に銀パラと親和性の良い銀を用いており、これらの材料はセラミックス誘電体とも相性が良く安定した特性を確保していました。このような電極構造を「NME」(Noble Metal Electrode/貴金属電極)と呼びます。
しかし、日本のバブル期明けの1990年代になるとこれらの金属の価格が大幅に上昇し、市場の低価格化の要望に応える意味でこの電極材料の低価格化が検討され、安価な材料であるニッケルと銅を使用したBMEが開発、採用されました。「BME」はBase Metal Electrodeの略で卑金属電極と呼ばれます。
しかしBMEの内部電極の主成分の銅(Cu)は活性が高い元素であるため、焼結過程における銅の酸化防止策の影響で図2のように容量の電圧依存性を変動させてしまいます。加えて内部電極材料の電気伝導率の向上による誘電正接(tanδ)やインピーダンス特性も変動します。
また電極材料の影響ではないのですが大容量化の一環としてのグリーンシートの薄膜化(=高電界化)も同様の変化を与えます。
ただ、これらの変化があってもクラス2セラミックキャパシターは電気的特性の安定性があまり重要ではない用途で使われることが多いためBME構造の廉価品は次第に受け入れられていきました。
ただし、安定性が重要視されるクラス1のセラミックキャパシターは技術開発が難しく2010年代から置き換えが行われているようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.