電解液に電極から電位が印加されると、電界によって電解液中のイオンが移動し、陽極にはアニオン(負イオン)が、陰極にはカチオン(正イオン)が引き寄せられてきます。
最終的には電極との界面に各イオンが整列して安定状態になりますが、この状態は一般のキャパシターの誘電体に外部電位を与えた状態と同等であり、接触面が絶縁性であればこの状態で静電容量を持つことができます(図2)。
そして、図2のこの接触面(界面)には分子構造に由来する仕事関数*と呼ばれる電位差が存在しますのでこの接触面は絶縁性になります。ちなみにこの二重層は物理的な作用によって発生するものであり、人為的に設けられた誘電体ではないので他の誘電体のような欠陥は存在しません。
ただし、この箇所の耐圧は数ボルトしかありません。この耐圧を超えて電圧を印加すると電解液の電気分解が始まり、ガスの発生を通じてEDLCが故障する原因になります。
電気二重層自体は、異なった二層(例えば固体と液体)が接触するとその境界面に発生し、陽極のみならず陰極側にも発生します。電極近傍でのイオンの挙動に影響しますのでメッキなどの電気化学などの分野では重要な用語になり、メッキを行う場合にもメッキ液の界面にこの二重層が存在しますので印加電流とともに印加電圧も管理されています。
*仕事関数:分子の電子軌道の中で一番エネルギー準位が高い(フェルミ準位)電子と真空(導電帯)とのエネルギーの差分。この差分以上のエネルギー(電界、電位差)が与えられると電子は導電帯へ飛び上がり移動できるようになります。
一般的なEDLCは、電極に活性炭電極(固体)、電解液に電解液(液体)を使用しています。
これらの境界面に形成される電気二重層の厚みは分子径程度と非常に薄いことに加えて、電極に使用している活性炭は非常に大きな表面積持っています。キャパシターの容量を表す基本の1式からA→大、d→小になりますのでF(ファラド)単位の大きな容量を得ることができます。
このような構造の電気二重層に電圧を印加し充電を行うと図3のように陽極、陰極の二重層にイオン(電荷)が集まってきてエネルギーを蓄積します。
この状態からEDLCに負荷を接続して電荷を放電すると充電電圧の低下に従って二重層に蓄積された電荷は拡散し初期状態に戻ります。
このようにEDLCの充放電は二次電池のように化学反応を利用していないので充放電による劣化は発生せず充放電回数の制限はありません。
この電気二重層に外部から電圧を加えると、仕事関数に相当する電圧までは絶縁体ですが、この電圧を超えると電解液が電気分解されて急激に電流が流れ出します。この分解電圧がEDLCの耐圧を決定します。この電圧は、電解液やEDLCの内部電極の種類によっても左右されます。
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