直流電子負荷装置の概要、利用するときの注意点、内部構造、利用事例などを分かりやすく解説する。
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
直流電子負荷装置は、スイッチング電源など直流の安定したエネルギーを供給する装置を効率的に評価するために1970年代初めに登場した。その後、スイッチング電源の需要の拡大とデジタル回路の低電圧化による電源品質への要求の高まりによって直流電子負荷装置の需要は拡大を続けた。最近ではリチウムイオン電池や燃料電池を使う電気自動車や太陽光発電の開発が活発化してきたため、大容量直流電子負荷装置の需要が拡大している。電子負荷の世界市場は2億米ドル以上といわれており、用途が拡大しているため年率5%成長が見込める。
直流電子負荷装置は広義の電源装置の一種である。広義の電源装置の機能は図1に示すように4つの象限で表現される。第1象限と第3象限のあるのが電気エネルギーを負荷に供給する狭義の電源装置(一般に電源装置という)である。第2象限と第4象限にあるのが電気エネルギーを電源から受け取る負荷装置である。すべての象限の動作が可能な電源をバイポーラ電源と呼ぶ。
今回は長年にわたって直流電子負荷装置の開発と販売に取り組んできた計測技術研究所の協力を得て直流電子負荷装置の概要、利用するときの注意点、内部構造、利用事例などを分かりやすく解説する。
高機能な電子負荷装置が登場するまでは抵抗器やコンデンサー、インダクターなどの受動素子を組み合わせて直流や交流の電源装置を評価していた。現在でも受動素子を用いた負荷装置は使われている。現在では図2に示すようにさまざまな種類の負荷装置があり、用途に応じて使われている。
もっとも古くからある負荷装置で銅ニッケル線やニクロム線など抵抗を有する金属線をホーローなどに巻き付けて作られた抵抗器を用いた負荷装置がある。抵抗器に直流や交流の電気を流すと発熱するので大型の抵抗負荷装置を利用する場合は廃熱ができる環境を用意する必要がある。
また、大型の電気メッキ用の電源などを評価する際には金属抵抗ではなく、水などの液体抵抗を利用した負荷装置を使う場合がある。
スイッチング電源やDC-DCコンバーターを試験するときに使われる負荷装置である。高精度かつ高機能である特長を持つため、高性能な電源装置や電池の評価には必須のツールとなっている。直流電子負荷は電圧による分類と負荷容量による分類がされている。おおよそ30Vくらいまでは低電圧、500Vくらいまでが中電圧、それ以上が高電圧と分類される。またおおよそ10kW以上の直流電子負荷装置は大容量に分類される。
直流電子負荷装置には電源からのエネルギーを熱に変換するドロッパー方式と、交流の電源系統に回生するスイッチング方式がある。大型以外の直流電子負荷装置の多くはドロッパー方式になっている。
高機能な直流電子負荷装置には端子間の電圧や電流を高精度に測定する機能があるため、電源を評価する際に外部にデジタルマルチメーターを接続しなくても電圧値や電流値を測定することができる。機種によっては直流電子負荷装置の内部にスイッチング電源のリップルノイズを測定する機能や、太陽電池の暴露試験をする際に必要なMPPT(最大電力点追従制御)動作ができるものがある。
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