メディア

エラーの発生原因を追う ―― パワコンの修理(3)Wired, Weird(2/2 ページ)

» 2021年06月10日 11時00分 公開
[山平豊(Rimos)EDN Japan]
前のページへ 1|2       

ACの入力電圧を上げれば……

 筆者が起こしたAC電圧の監視部の回路図は、以下の図4の通りだ。

図4:AC電圧監視部回路図

 図4で確認したがVR4で調整されたAC電圧はC26で積分されIC3(A7840)に接続されていた。IC3が劣化して利得が下がったので出力も下がっていた。逆にVR4を調整してACの入力電圧を上げればAC電圧低下エラーは改善できるはずだ。

 A7840の端子2の電圧をテスターで測定しながらVR4を右へ回して100mVを120mVに2割アップさせた。A7840出力端子の7ピンの電圧は600mVが670mVに上がった。

 この状態でAC100VとDC26Vの電源を切り、ハンダ面の仮ジャンパーも外した。2つの電源を再投入し正面の電源スイッチをオンにした。約1秒でAC電圧低下を占めるエラー表示「F1」は消え、AC給電の赤LEDが点灯した。その6秒後に太陽電池給電の緑LEDが点灯した。図5に示す。

図5:AC給電動作での電圧出力(左)と太陽電池給電動作での電圧出力(右)

 図5の左はAC給電動作で電圧出力は138.8Vだった。右は太陽電池給電動作で電圧出力は142.1Vになった。パワコンは正常に動作している。これなら依頼者も安心してパワコンを使えるだろう。これで修理は完了だ。

 AC給電と太陽電池給電の切り替え動作は回路的には把握できていないが、下手に触ると電力部品なので壊してしまう可能性があるので、基板の調査はここまでにした。

あらためて確認できた2つのこと

 今回の修理で、2つのことを確認できた。1つは電解コンデンサーを交換すれば電気製品は直るというのは過去の伝説であり、2000年以降の電気製品には適用できないこと。もう1つは当たり前だがエラーの発生原因を追いかけてその原因をクリアにすることが修理の近道ということだ。

 修理依頼主は部品面とハンダ面がコーティングされた困難な基板であっても、粘り強く頑張って20個の電解コンデンサーを外し、同等品をハンダ付けしていた。筆者も同じハンダ面がコーティングされた基板の電解コンデンサーを交換した経験があるがかなり難しい作業だった。

 結果的に依頼主の作業は無駄な努力だったが、その粘りと何としてもパワコンを修理したいという執念には敬意を表したい。依頼者のその気持ちに応えることができて、筆者もうれしかった。これが修理の仕事の醍醐味でもある。

 修理品を発送して3日後、依頼主から連絡があった。

到着し電源、ファンをつないで通電。動作が確認できました。この度は本当にありがとうございました。

 これで、1件落着だ。

⇒「Wired, Weird」連載バックナンバー一覧

次の記事を読む

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.