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スペクトラムアナライザーの概要と種類スペクトラムアナライザーの基礎知識(1)(3/5 ページ)

» 2021年08月17日 10時00分 公開
[TechEyesOnline]

マルチフィルター方式のリアルタイムスペクトラムアナライザー

 掃引型スペクトラムアナライザーは、変化する信号を途切れなく観測することはできない。変化する信号を途切れなく観測できるのがリアルタイムスペクトラムアナライザーである。リアルタイムスペクトラムアナライザーはBluetoothで使われている周波数ホッピング方式の信号、突発的に発生するノイズ、バースト状態で変化するレーダー信号などの観測に使われる。

 最初に登場したリアルタイムスペクトラムアナライザーは、アナログ回路で作られたバントパスフィルターを多数使って同時に信号波形のレベルを観測するものだった。

図11:マルチフィルター方式のリアルタイムスペクトラムアナライザーの原理図

 マルチフィルター方式のリアルタイムスペクトラムアナライザーは回路規模が大きくなるため、現在では特殊な用途でしか使われない。

【ミニ解説】周波数ホッピング方式

 周波数ホッピング方式(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)とは、スペクトラム拡散方式の一種であり、ある範囲の周波数帯域の中から、通信が使用する帯域を高速に切り替えながら通信する方式である。

図12:周波数ホッピング方式のイメージ

 周波数ホッピング方式を採用しているBluetoothでは、2.4GHz帯の広帯域(2402M〜2480MHz)の中に1MHzごと、79個のチャンネルを設定しており、1秒間に1600回チャンネルを切り替えながら通信を行う。これにより同じ周波数帯でノイズを発生する機器(例えば電子レンジなど)が周囲に存在していても、その影響をあまり受けずに通信することができる。

デジタル方式のリアルタイムスペクトラムアナライザー

 入力信号をダウンコンバートした後にA/D変換器で波形をデジタル化し、信号処理によって広い解析帯域幅で信号の周波数スペクトラム変化を途切れなく観測できるようになった。最近のリアルタイムスペクトラムアナライザーはこの方式である。デジタル方式のリアルタイムアナライザーは高性能なデジタル信号処理回路と大容量メモリを搭載するため高額となる傾向がある。

 リアルタイムスペクトラムアナライザーは途切れなく周波数の変化を記録できることが本来の定義だが、観測が途切れる時間が短く、実用上問題がない場合はリアルタイムスペクトラムアナライザーとして販売されている。このような製品はデジタル回路が簡素化できるため安価に製品を提供できるメリットがある。

図13:デジタル方式のリアルタイムスペクトラムアナライザーの原理図

オシロスコープ(FFT付き)

 信号を時間軸で観測するオシロスコープには、メモリに取り込んだ波形データにFFT演算を行うことによって周波数軸で信号を観測できる機能がある。高速A/D変換器の進歩によって高い周波数の信号を高分解能でメモリに取り込むことができるようになった。しかし、オシロスコープに使われる高速A/D変換器は8〜12ビット程度であるためダイナミックレンジには限界があり、レベルの大きな信号に埋もれた小さな信号は観測できない。また、波形を一度メモリに取り込んだのちにFFT演算を行うため、信号の捕捉は断続的になり、取りこぼしが発生する。

図14:オシロスコープ(FFT付き)の原理図

 オシロスコープ(FFT付き)は信号波形を時間軸で観測する際に、波形に重畳したノイズの周波数成分をFFTによって周波数軸に変換してノイズ源を特定するなどの用途に使われている。

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