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半導体(1) ―― 半導体の製造工程中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(60)(1/2 ページ)

今回からは電子回路に欠かせない半導体について説明します。本シリーズでは半導体の市場不良および、その原因を説明するための製造工程の問題を主眼に説明をしていきます。

» 2021年11月29日 11時00分 公開

 前回はマイコンなどのクロックに使われる振動子の構造や注意点について説明をしました。今回からは電子回路に欠かせない半導体について説明します。しかし半導体の原理、メカニズムについては著名な方々や半導体メーカーによってWeb上で詳細な解説がされています。ですから本シリーズでは半導体の市場不良および、その原因を説明するための製造工程の問題を主眼に説明をしていきます。したがってシリコン(Si)半導体、P型、N型、ダイオード、トランジスタなどについては必要最小限しか説明しませんので必要に応じて関連知識を補ってください。

半導体の製造工程

 半導体の主原料はシリコン(珪素)と呼ばれる純粋な結晶です。通常、自然界では酸素との化合物、砂の主成分としての二酸化ケイ素(シリカ)の形で存在し、ケイ素鋼板にも微量成分として使われています。
 このシリカを還元し、純度0.99…99(11桁 通称イレブン・ナイン、現在は15桁精度)程度まで高めた単結晶の塊が図1に示すシリコン・インゴットと呼ばれるもので長さ1m程度の一抱えもある大きさのものです。直径は現在の主力は30cmWafer(ウエハー)です。

 半導体はトランジスタ1個、IC1個などの微小なサイズで1個ずつ生産するわけではありません。現在主力のプレーナー(平面)工法では図1のシリコンインゴットから薄く(1mm以下)切り出された図2のウエハーと呼ばれるシリコン基盤の上に多数個の半導体を一気に作成し、後で個別に切り離す(切り出す)方法で作成します。なお図1のインゴット、図2のウエハーを生産するメーカーは世界でも数社しかなく、用途別に加工されたウエハーを半導体メーカーが購入して各社の半導体に仕上げています。

図1 シリコンインゴット図2 シリコンウエハー 左=図1:シリコン・インゴット 出所:4itolino/123RF.com
右=図2:シリコン・ウエハー 出所:coddie/123RF.com

 このウエハー上に素子をまとめて作成する工程を前工程、一般には拡散工程といい、個別に切り出して組み立てる工程を後工程、あるいは組立工程といいます。両者の主な流れは図3図4表1表2のようになっていますが切り出された個片のウエハーが一般に言う“チップ”です。
 また従来は「高度クリーンルーム」は前工程を指していましたが、最近では品質向上のために後工程の一部をクリーンルームで行うようになってきています。

前工程

 図3表1にプレーナー(平面)型トランジスタを例にした前工程の概要を示します。プレーナー工法は写真法が使えること、ICなどへの応用性などから現在の主力製造法になっています。ですが、この工法以外にも成長型、ドリフト型および、合金型と呼ばれる製造方法などがあります。
 前工程のほとんどは高度クリーンルーム内で行われますので品質向上のためには塵埃(じんあい)を減らすこと、結果的にはできる限り人手を減らし、その上で適切な管理を行うことが重要になります。

 また品質監査の一環として工程監査を行う場合はほとんどが後述する後工程が主体であり、前工程を監査する場合は監査項目を絞って短時間で済ませないと返って品質低下にもなりかねないので注意が必要です。

*本稿で意味する管理とは検査ではなく製造工程を管理者が意図した状態下に置くための活動のことです。

図3 前工程のイメージ 図3:前工程のイメージ(プレーナー型)[クリックで拡大]
ウエハー切り出し シリコン単結晶をインゴットで購入した場合は所定の厚みでウエハーを切り出します。
表面/鏡面研磨 ウエハー表面を所定の精度で研磨します。
拡散 一様に酸化膜を形成し、酸化膜上に必要なパターンを描きます。
パターンに従って酸化膜を除去します。
むき出しになったシリコン基盤表面にボロンやヒ素、リンなどのガスを通して拡散を行います。拡散深さは2〜10μm程度です。
不要になった酸化膜を除去し、再度必要なパタンの描写〜拡散を行い、チップを完成させます。
コンタクト形成 チップ表面に配線可能の状態になるよう、必要な場所を処理します。
アルミ蒸着 コンタクト間を配線します。主にアルミが使われます。
電極形成 外部電極へ引き出すためのボンディングパッドを金メッキなどで作成します。
保護膜形成 空気や外部雰囲気などからの汚染を保護するための保護膜を作成します。
樹脂膜やリン酸ガラス(PSG)膜、窒化膜などが使われます。
プローブ/外観検査 電気特性の検査を行います。
ICなどの多機能なものは代表特性のみで、ON抵抗や飽和電圧は熱が発生するので行いません。
表1:前工程の概要(プレーナー型)
注)図3表1の工程概要はあくまでも説明用で、各工程間には洗浄、コーティング、チェックなど各メーカー独自の項目があり、多いもので100ステップを超えます。
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