電磁気学入門講座。今回は銅巻き線を流れる電流の表皮効果について説明します。
渦電流は、副次的に他の電力損失の原因にもなります。それは、銅巻き線を流れる電流の表皮効果です。表皮効果は、AC電流が導体の外表に流れる傾向があり、断面全体に流れない現象です。この現象は、渦電流が導体内で中央部の電流の流れを相殺するように振る舞い、導体の外表の電流の流れを増強することが原因です。導体の外表に沿って高電流が流れ、中心にはほとんど電流は流れません(図1)
実効的な、電流が流れている表皮からの深さ(表皮深さ)は、以下の式で求められます(電流が全体の1/e≒37%になる表皮深さ)
ρは導体のバルク抵抗率、fは周波数、μ0は自由空間透磁率、μrは比透磁率です。銅のマグネットワイヤ(20℃、ρ=16.8x1010-9Ωm)では、式1は以下にように書き換えることができます。
式1から他に分かることは、表皮深さは、電流量ではなく、電流周波数の平方根に反比例することです。銅のマグネットワイヤに関しては、表皮からの深さは60Hzで8.52mmですが、10kHzだとわずか0.66mmに、100kHzでは0.21mmにまで減少します。従って、低電流の設計では表皮効果の影響はさらに大きくなります。
1つは、高電流インダクターでは、銅損を減らすためにワイヤ径を太くしても、オームの法則の通りの効果はありません。なぜなら、表皮効果は、電流が断面全体を流れることを妨げるからです。2つ目は、導体に伝わってくる高周波信号とスイッチングスパイクが、表皮効果によってブロックされることです。PCBの薄膜配線はDCに対しては低抵抗ですが、高周波ではインピーダンスが高くなります。それゆえ、高周波ノイズはその発生源でフィルターすることが重要で、薄膜配線およびワイヤはできるだけ短くします。
このアドバイスは、多くの電子工学の教科書や入門書に大抵書かれていることですが、表皮効果を理解して、どうして他より厚い銅薄膜配線が高周波ノイズを低減できないかを理解する方がもっと簡単です。
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