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電磁気学入門(5)コアレス〜表皮効果DC-DCコンバーター活用講座(48)(2/2 ページ)

» 2022年03月04日 10時00分 公開
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インダクターの表皮効果損失を低減するには

 インダクターにおいて表皮効果損失を低減するには、表面積対体積比を増加させるために、円筒形ワイヤの代わりに撚り線(Litz:リッツ線)かフラットワイヤを使用します(図2参照)

図2:フラットワイヤとリッツ線の巻線
リッツ線のLitzは、ラテン語のLicium(撚り線)を起源とするドイツ語のLitzendraht(編組線)に由来する。

 低出力電圧のインダクターやトランス設計の場合、巻き線が1ターンかわずか数ターンである必要があります。このような場合には、円筒形やフラットワイヤよりフォイル巻き線を使うのが一般的です。フォイル巻き線には、マグネットワイヤと比べていくつか有用な点があります。表皮深さは非常に薄いのですが、その幅により低DC抵抗を維持します。

 また、スペース効率が高く、次の巻き線を都合よく平面に置くことができ、巻き線が数ターンの場合に生じる巻き線レイヤーの見苦しい段差がありません。最後に、レイヤー間の挟み込みが簡単にできます。

 フォイル導体は、同じ断面積において円筒形ワイヤより20%広い表面積をもち、高周波信号は表皮効果により表面に移動するので、より良い性能が得られます。

図3:フォイルと円筒形ワイヤの比較

 このフォイルと円筒形ワイヤは同じ断面積(10mm2)をもつのでDC抵抗は同じだが、フォイルは円筒形ワイヤの1.2倍の表面積をもつのでAC抵抗は小さい。

 この他に、フォイル巻き線が円筒形ワイヤとの比較において有用な点は、コア周りの巻き線が利用な可能な「窓」スペースを有効利用できることです。形の異なるコアは窓の大きさが異なり、窓を利用できる割合が異なります。例えば、EEコアはEPコアより、サイズに対してより大きな窓面積をもっています。広く平たんな窓は、巻き線高を減らし、レイヤー間の無駄なスペースも減らします(図4

図4:縦長な巻き線窓と平たんな巻き線構造との比較

 両方の例はともに、一次側6巻きと二次側6巻きが絶縁テープによって分離されている。赤色の面積は無駄なスペースを示している。平たん構造は有効な窓面積をより効率的に使用していることが容易に分かる。

 円筒形ワイヤ使用時の窓の有効利用係数(有効面積/銅面積)は、窓サイズにもよるが通常70〜75%ほどだ。リッツ線では、個々の撚り線間のスペース損失があるので、この係数は減少する。経験則として、リッツ線では層ごとに面積が25%減少する。2つの覆い層をもつ中心撚り線からなるワイヤは、その断面積の0.75×0.75=56%しか利用できない。これに対してフォイル巻き線は、ほとんどギャップや無駄なスペースがなく、必要な絶縁バリアの厚みにもよるが、有効利用係数は80〜90%に到達する。

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執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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