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SiCパワーMOSFETを採用した電源回路、配線レイアウトの考慮が高精度解析に不可欠SiC採用のための電源回路シミュレーション(3)(2/4 ページ)

» 2022年03月24日 13時00分 公開

配線レイアウトの大幅修正も可能

 シミュレーションキットについて、もう少し詳しく説明しよう。キーサイトのWebサイトから同キットをダウンロードすると、ユーザーはPDF形式のアプリケーションノートや、評価ボードのレイアウト情報などとともに、ADS用の「Workspace」を入手できる。

 回路シミュレーションの作業で利用するのはWorkspaceである。Workspaceとは「作業台」のことである。この中に、評価ボードの配線レイアウトデータや回路図、ボードの厚み方向のデータなどが収められている。このほか、評価ボードに搭載した部品のデバイスモデル、例えば、SiCパワーMOSFET(SCT2080KE)の高精度なデバイスモデルや、抵抗やコンデンサー、インダクターといった受動部品のデバイスモデルなどが格納されている。つまり、回路シミュレーションの対象となる電源回路のメイン回路を構成する電子部品のデバイスモデルは全て収められている。従って、ユーザーが個別に、さまざまな半導体/電子部品メーカーのHPを訪問して、デバイスモデルをかき集める必要はない。

 配線レイアウトデータをクリックすれば、ADS上でそれが表示される(図1)。もちろんADSの上で、配線レイアウトを修正できる。例えば、配線を延ばしたり、縮めたり、ルートを変更したり、搭載する受動部品の位置を変えたりするといった簡単な作業であれば問題ない。しかし、ADSはあくまで回路シミュレーターだ。配線レイアウトを自由に引き回す作業は得意ではない。

図1:評価ボード「P01SCT2080KE-EVK-001」の配線レイアウトデータをADSで表示した画面[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー

 そこで比較的大きな修正が必要な場合は、配線レイアウトデータをADSからエキスポートする。そのデータをプリント基板CADに読み込んで、大掛かりな修正を加えてから、再びADSにインポートするわけだ。こうすることで、希望する配線レイアウトでの回路シミュレーションが可能になる。

 もちろん配線レイアウトを大幅に修正すれば、使用する抵抗やコンデンサー、インダクターなどの電子部品の変更が必要になるケースが考えられる。この場合は、新しい電子部品のデバイスモデルをユーザーが登録しなければならない。ただし登録作業は簡単である。電子部品メーカーは通常、デバイスモデルをHPで公開しているからだ。登録作業はわずかな時間で完了する。

 なお、SiCパワーMOSFETをIGBTやスーパージャンクション型パワーMOSFETなどのスイッチング素子に置き換えることも可能である。この場合も、パワー半導体メーカーが提供しているデバイスモデルをダウンロードして登録するだけでいい。ただし、そのデバイスモデルの精度が低ければ、この後に実行するさまざまな解析作業の結果と測定結果が一致しないという問題に遭遇することになるため注意が必要だ。

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