携帯電話の規格と同様に、Wi-Fiの規格も進化を続けており、Wi-Fi 6Eはその中でも新しい規格となります。6GHz帯を使用する同規格の登場で、干渉テストはどう変わるのでしょうか。
携帯電話の規格と同様に、Wi-Fiの規格も進化を続けており、Wi-Fi 6Eはその中でも新しい規格となります。Wi-Fi 6Eでは、ワイヤレスIoT(モノのインターネット)デバイスは、アンライセンスバンド(免許不要の周波数帯域)の6GHz周波数帯を使用し、より多くの帯域幅にアクセスできるようになります。一方で、6GHzの周波数帯は、デバイスメーカーに新たな制約をもたらします。既に多くのデバイスが6GHz帯を利用していて、Wi-Fi 6Eでは、干渉を防ぐために新たなテストが必要になるからです。
Wi-Fi 6Eがどのような位置付けなのかを理解するため、まずはWi-Fi規格についておさらいをしていきます。
最初のWi-Fi規格は1997年に登場しました。リンク速度は1〜2Mビット/秒(bps)から600〜9608Mbpsに向上しましたが、そのほとんどが同じ周波数帯を使用しています。Wi-Fi 6Eでは、規格の歴史上、初めて新しい周波数帯を使用することになります。
Wi-Fi 6Eは、Wi-Fi 6のextension(拡張)版で、「IEEE 802.11ax」とも呼ばれます。Wi-Fi 6は、OFDMA(直交周波数分割多元接続)技術を使用してネットワーク性能を向上させ、高次QAM(直交振幅変調)フォーマットによりデータ速度を向上させています。
Wi-Fi 6対応デバイスは、2.4GHz帯と5GHz帯で動作しますが、Wi-Fi 6Eはこれに6GHz帯が加わります。6GHzの周波数帯は、利用できる帯域幅がはるかに広くなります。これらのデバイスは、米国および連邦通信委員会(FCC)の規制に準拠する地域では1,200 MHzの連続帯域幅を、ヨーロッパおよび無線機器指令(RED)の規制に基づくヨーロッパ電気通信標準協会(ETSI)の規格に準拠する地域では480M〜500MHz連続帯域幅を利用することができます。
6GHz帯の帯域幅が拡大したことは、デバイスメーカーにとって、より優れたパフォーマンスと新しいアプリケーションをエンドユーザーに提供できる大きな可能性をもたらします。Wi-Fi 6Eは、ビデオストリーミング、オンラインゲーム、ビデオ通話など、より高速で信頼性の高いインターネットアクセスを消費者に提供し、特に企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させる上でも有用です。
IT部門は、より多くのデバイスをネットワークに接続し、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、生産性とイノベーションを促進することができます。空港、スタジアム、会議場、教育・医療施設などの高密度な環境においても、より多くの、より多様なデバイスを扱うことができるため、Wi-Fi 6Eは非常に大きなメリットをもたらします。
しかし、6GHz帯の追加帯域幅を活用することは、決して容易ではありません。5G携帯電話、Wi-Fiアクセスポイント、衛星回線、モバイルTV放送、公共通信回線など、多くのユーザーが既にこの周波数帯を使用していること、また、既存の通信事業者が他のユーザーよりも優先されることが大きな問題となります。その結果、FCCとETSIは、周波数の有効利用を保証するために、いくつかの新しいテストを義務付けています。
CBPテストは、FCCが義務付けた新しい重要項目で、既存キャリアのサービスへの干渉を防止ぐために、デバイスにCBPを使用することから必要になるものです。FCCでは、アクセスポイントやクライアントなど、全てのデバイスクラスに対してCBPテストを課し、合格することを要求しています。
図1はCBPテストの構成です。2台のシグナルアナライザと相加性白色ガウシアン雑音(Additive white Gaussian noise:AWGN)信号源で構成され、テスト信号用に10MHz幅の雑音(現用信号)を生成します。このテストには、被試験デバイスと通信するためのクライアント機器(図には表示なし)と信号調整コンポーネントも必要です。信号源は、20MHzチャネルではチャネル内の1つの周波数で、160MHzチャネルではチャネル内の3つの異なる周波数で現行信号を注入する必要があります。
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