今回はワイヤーボンドの用語、治具および、ワイヤーボンドの不良について説明します。
前回説明した金属間化合物はなかなかイメージがつかみにくいものだったのかもしれません。金属間化合物の理解を深めるために例を挙げると、はんだ付け現象があります。
はんだ付けははんだと呼ばれる金属が糊(のり)のような作用で接着していると思われるかもしれませんが主たるメカニズムは次のようなものです。
接合面に加圧こそしませんが温度を利用して銅箔の銅とはんだ中のスズとの間で金属間化合物(Cu6Sn5やCU3Sn)を作成して接合しています。ですからはんだ量を増やしても金属間化合物の厚みが増えるわけではないので接合強度は上らず、逆に最適温度域や時間域を外れるとこの金属間化合物の厚みが変わってもろくなったり弱くなったりして接合強度が低下します。はんだ付けには最適値と最適形状があると言われるのはこのような背景があります。また金属間化合物は数種類の金属の組み合わせで確認されていますが、その材料の組み合わせによって特徴(性質)が異なってきますので注意が必要です。
前回はワイヤーボンドとはどういう過程で作成され、どういうメカニズムで接合されているかの概要について説明しました。今回はワイヤーボンドの用語、治具および、ワイヤーボンドの不良について説明します。
毛細血管を意味する細い穴のあいた治具で、この治具を使ってワイヤーボンドを行います(参考図A、図1)。
キャピラリー先端外形は図1、図2、図3のイメージ図に示すようにパッド間距離(BPP)よりも細くなっており、かつ超音波振動やワイヤー加工の衝撃に耐えるだけの強度も必要になります。したがって高密度セラミックやルビーなど高硬度の材料を用いる場合がほとんどです。
このような特徴を持つキャピラリーですがボンディング回数が増えるに従ってセラミック製といえどもキャピラリー先端部は摩耗し、かつ汚染されていきます。これは主としてボンディング工程で印加される超音波振動によるキャピラリーの擦れによるものですがミクロン以下の平面度を持つキャピラリー先端に堆積物が付着すると加圧時の圧力にムラが生じボンディング品質が劣化します(図4)。
したがってキャピラリーには使用回数の上限(数十万〜100万回)があることになり、適切な管理(洗浄、研磨、交換など)が要求されます。
金ワイヤー用の標準的な形状はスポイトの先端部直径を0.3〜0.6mm、本体径を1.5〜1.7mmまで小形化し、セラミック化したものをイメージしてください。
またリードフレーム側の2ndボンドは図5に示すようにキャピラリー先端で剪断(せんだん)するようなボンディングになります。このボンド部のキャピラリー外側部をステッチボンド、内側部をTailボンドと呼びます。
Tailボンドは表1の工程5でキャピラリーが上昇した時にワイヤーが一緒に上昇しないようにすると共にこの後に行われるワイヤーの引きちぎりの影響がステッチ部に及ばないようにするためのものです。
このステッチ形状は圧力以外にもキャピラリーの先端Rや逃げ角FAにも関係します。
図6(a)のFA小の場合はつぶれ幅は広く薄くなり、図6(b)のFA大の場合では逆方向になります。また先端Rが大なら厚み変化が緩やかになります。
これらの要因や使用ワイヤー径(WD)、キャピラリーの先端径Tを加味して最終的な形状を決めます。
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