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ワイヤーボンド(2) ―― 関連用語や治具、不良について中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(72)(3/3 ページ)

» 2022年11月29日 10時00分 公開
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ウェッジボンディング(超音波ボンディング)技術

 主としてパワーデバイスなどで用いられる技術です。大電流用ワイヤー材料には主としてアルミかアルミ合金が用いられますがアルミは表面酸化が早く、うまくボールができませんので両端共にウェッジ形状のボンディングが行われます。

図7:接続バーのイメージ

 このウェッジボンディングでは超音波と荷重によりワイヤーとパッドとを変形させてアルミとアルミとの清浄面を露出させて接合させます。過熱せず常温で超音波と荷重を使って接合するため超音波ボンディングとも言われますが金ボールの圧着方式に比べ、より大きな出力の超音波をより長時間印加する必要があります。
 また金線などのボールボンディングではボール圧着後にキャピラリーが上昇した時、360度回転対称ですからどの方向にも移動できますが、このウェッジボンディング方式では移動方向がワイヤーの引き出し方向に限定されます。このため2つのパッドの位置関係が望む方向になるまでフレームを回転させてやる必要があるため、ボールボンディングよりも作業時間は長くなります。

 このようなウェッジボンディングの課題を嫌って図7のように接続バー(銅合金+スズメッキ)で直接リードとチップをはんだ付けで接続したパッケージもあります。このパッケージではチップサイズが3〜5mm角と大きく、はんだ塗布→接続バー設置→はんだ接合までを自動機で行うことができます。
 この金属バーによる接合はワイヤーボンドに対して電流容量の向上、インダクタンス成分の低減がメリットとされていましたが自由度の低さから小型パッケージの主流にはならなかったようです。

 次回は最近導入が進んでいる銅ワイヤーの検討事例を例にワイヤーボンドの評価法について説明します。


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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