SoC(System on Chip)アーキテクチャの微細化は壁に直面する中で注目が集まるチップレット技術。以下は、現在のチップレットの進化において重要と考えられる3つの規格の概要を紹介する。
SoC(System on Chip)アーキテクチャの微細化は壁に直面している。そのため、「チップレット」として一般に知られるヘテロジニアスシングルパッケージシステムにおけるダイツーダイ相互接続への道が開かれつつある。このようなチップレットに最適化されたインターコネクト技術は大きな支持を得ているものの、まだ初期段階にある。
そのため、チップレット間のインターコネクトの標準規格は、新しいマルチダイ半導体時代にとって極めて重要になっている。以下は、現在のチップレットの進化において重要と考えられる3つの規格の概要だ。これらの標準規格は、オープンなチップレットエコシステムを構築する上で重要な役割を果たすと期待される。
「Bunch of Wires(BoW)」インターコネクト技術は、単一パッケージ内の1対のダイ間(D2D)のオープンで相互運用可能な物理インタフェースを定義している。同技術では、SoCの分割に最適化された物理層(PHY)を規定して、チップレットのマルチダイ相互接続の基盤を形成している。
米国のスタートアップ企業であるEliyan Corporationの創業CEO(最高経営責任者)であるRamin Farjadrad氏は、BoWの基礎となる独自のインターコネクト技術を開発し、2018年に高効率ハードウェア技術の実現を目指す共同コミュニティー「Open Compute Project(OCP)」に同技術の標準化を提案した。同技術はその後、チップレットインターコネクトスキームとしてOCPに採用された。
ダイツーダイ接続のオープンな業界標準規格である「Universal Chiplet Interconnect Express(UCIe)」は、半導体およびパッケージング企業、ファウンドリー、クラウドサービスおよびIP(Intellectual Property)サプライヤーなど、80社を超える企業のコンソーシアムによって2022年3月に発表された。これは、マルチダイシステムの異種統合に向けた重要な一歩であり、同コンソーシアムは、半導体チップレットの新たな設計エコシステムの構築を目指している。
UCIeは、パッケージレベルでのプラグアンドプレイインターコネクトを提供し、さまざまなサプライヤーの異なるプロセス技術が適用されたダイ間の相互運用性を合理化する。BoWインターコネクトと同じシグナリングおよびクロッキングスキームとアーキテクチャの基礎をベースにしていて、現在「UCIe 1.1」仕様を利用可能だ。
厳密にはチップレットの標準ではないが、より小さなスペースにより多くのメモリチップをパッケージングできることから、チップレット設計に欠かせない要素になりつつある。HBMは、シリコン貫通ビア(TSV)と呼ばれる垂直チャネルを使用することで、さまざまな層のメモリチップを相互に積み重ねることができる。当初は、メモリとプロセッサ間のデータ移動距離を短縮するために設計された。
HBMは当初、データセンターやクラウドコンピューティングにおける計算集約型アプリケーション向けに考案されたが、DRAMチップを垂直に積み重ねることができるため、現在ではチップレット設計に大いに関連した技術となっている。そのため、いくつかの新しいチップレットソリューションでは、HBMプロトコルだけでなくUCIeもサポートしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EDN Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.