自動車でイーサネットを使用することの価値を理解するために、アプリケーションごとにイーサネットの使用状況を分類します。新しく定義されたシングルペアイーサネット(SPE)は、IEEE 802.3cg(10Mbps)、IEEE 802.3bw(100Mbps)、IEEE 802.bu(1Gbps)およびIEEE 802.3ch(10Gbps)によって定義される10Mbps〜10Gbpsの速度をサポートします。これらの新しいイーサネットテクノロジーはいずれもシングルペアケーブルを使用して動作し、最大15mの距離で通信を実施することができます。この距離は、自動車内で最長のリンクを網羅するのに十分な長さです。また、イーサネットでは、IEEE 802.1ASタイムスタンプ機能を使用してセンサーデータの時間同期を実現し、待ち時間を短縮することもできます。
イーサネットは高速通信を実現できますが、高速通信はあらゆる状況で必要とは限りません。例えば、ドア制御モジュールや暖房、換気、空調システムとの通信では、100Mbpのデータレートは必要ありません。10MbpsイーサネットPHY、または、CAN(Controller Area Network)などの代替ネットワークプロトコルは、低速で、帯域幅の消費が少ないユースケースに適しています。しかし、集約されたカメラデータと自律運転センサーデータをゾーンモジュールからセントラルコンピューティングシステムに送信するために、高速通信を確保するケースはより適しています。
次に、レーダー、LiDAR、カメラ、ボディーのアプリケーションで使用される通信速度について解説します。通常、レーダーSoC(System on Chip)がLevel 1のデータを処理する場合、ゾーンモジュールとレーダーデータを通信するためにCANを使用します。未加工データをセントラルコンピューティングシステムに送信して処理を進めると、さまざまなレーダーセンサーのセンサーフュージョンを通じて、より多くの情報を抽出できます。大量の未加工データを送信するには、より高い帯域幅が必要になるため、レーダーとLiDAR内で100Mbps〜1Gbpsのイーサネットのためのスペースが確保できます。
カメラにとって、一定レベルのADASデータが増加したことでフロントカメラからの未加工データ全てを後処理する必要がある場合、FPD-Linkが最適なプロトコルです。
フロントカメラから取得したデータを圧縮できる場合で、このような高レベルのADASデータは必要ない場合、100Mbpsイーサネットを代わりに使用できます。
ドア、ハンドル、センサー、ウィンドウ、リフト制御モジュール、サイドミラー制御モジュールのようなボディードメインモジュールは従来、高帯域幅を必要としないので、CANとLIN(Local Interconnect Network)の各プロトコルを使用して通信を実施してきました。設計者は、車内のイーサネット使用量の増加に伴い、CANとLINだけでなく、10Mbpsの10Base-T1マルチドロップイーサネットも使用できるようになりました。イーサネットは従来、ポイントツーポイント(Point to Point)トポロジーを採用していましたが、10Base-T1Sイーサネットは、バストポロジーを使用して機能する初のイーサネット規格です。
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