電源の供給電圧については、STM32MP135Fシリーズの場合はデータシート「DS13483」の6.3.1章”General operating conditions”内、Table 13.“General operating conditions(continued)”※3に記載されています。
※3)DS13483
これらを参照して、必要な電源を参考に列挙してみましょう(表1)
No | 信号名 | 用途 | 電圧 | 推奨する電源種類 |
---|---|---|---|---|
1 | VDD_CORE | コアドメイン用電源 | 1.25V(通常/STOPモード時) 0.9V(LPLV-Stopモード時) |
BUCK SMPS |
2 | VDD_CPU | MPUドメイン用電源 | 1.25V(通常時) 1.35V(オーバードライブ時) |
BUCK SMPS |
3 | VDD, VDD_PLL | VDDドメイン用電源 | 3.3V(IO電圧3.3V使用時) 1.8V(IO電圧1.8V使用時) |
BUCK SMPS |
4 | VBAT | VSWドメイン用電源 | 1.6 V < VBAT < 3.6 V (電池から供給時) |
バックアップ用電池 電池不使用時VDD |
5 | VDDQ_DDR | DDR PHY用電源およびDDRメモリのメイン電源 | 1.35V(DDR3L使用時) 1.2V(LPDDR3使用時) 1.5V(DDR3使用時) |
BUCK SMPS |
6 | VDDA | アナログドメイン用電源 | 3.3V | BUCK SMPS / LDO |
7 | VDD_SD1, VDD_SD2 | SDカード(SDMMC1) eMMC(SDMMC2) IO用電源 |
3.3V(SDカード初期化時) 1.8V(SDカードHS動作時) |
BUCK SMPS / LDO |
表1:マイクロプロセッサの動作に必要な電源の例(STM32MP13シリーズ) |
VDD_CPU、VDD_COREは、動作モードに応じて供給電圧の変更が必要な場合があります。VDD_CPUはCPUの動作周波数を向上させるために、CPUへの供給電圧を上げて、動作させるオーバードライブを使用する場合です。オーバードライブ時には供給電圧を通常時より0.1V上げる必要があります。
VDD_COREは、低消費電力モードにおいてさらに消費電力を下げたい場合、LPLV-STOPモード時にVDD_COREの電圧を0.9Vに下げることが可能です。
VDD_SD1、VDD_SD2はSDカードを接続し、HS200モードでの高速転送する場合は、動作中に3.3Vと1.8Vの切り替えが必要になります。これは、SDカードにアクセスするIOの電圧は初期化時に3.3Vが必要な一方で、HS200モード時には1.8Vに下げないと最大クロック周波数で転送できないというSDカードの仕様によるものです。
マイクロプロセッサに使用する電源回路のうち、コアドメイン用電源VDD_CORE、MPUドメイン用電源VDD_CPUおよびDDRメモリ用のメイン電源と共用となるVDDQ_DDRは、消費電力が多いため、電力効率の高いBUCKスイッチモード電源(BUCK SMPS)を使用することを推奨します。消費電力が少ないものに関しては、低ドロップアウト(LDO)リニアレギュレーターでも構いません。実際の電源設計では、VDDはマイクロプロセッサに接続される他のICへの電源供給と共用になることが多いため、これらの電源供給に対応できるよう、LDOではなくBUCK SMPSの使用を検討するケースが多いです。
これらの電源の立ち上げ順序は、データシートやアプリケーションノートに記載されている半導体メーカーからの指示に必ず従う必要があります。電源の立ち上げ順序を守らないと、デバイスが永続的に損傷する可能性があるためです。STM32MP135Fシリーズの場合は、データシート「DS13483」の3.6.1章“Power supply scheme”※3)に記載があります。この記載を図で分かりやすくしたものがアプリケーションノート「AN5586」の5.2章 “Power-up/power-down sequence and reset management”内、”Figure 9. Power-up / power-down with VDDCORE and VDDCPU independent, DDR3L”※4)に記載されています(図3) ここで重要なことは、VDDが完全に立ち上がってから他の電源を立ち上げることです。
※4)AN5586
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