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半導体用温調器修理の経験が生きる! アナログ回路のノイズ対策Wired, Weird(1/2 ページ)

半導体製造関連の温調器を13年ほど修理してきた筆者は、このアナログ機器の温調器修理経験を買われて知人から依頼された農業関連の技術支援も始めた。今回は、高精度な農作物の自動計量器の精度を維持するために重要なノイズ対策について解説する。

» 2025年05月26日 10時00分 公開

 半導体製造関連の温調器を13年ほど修理してきた。このアナログ機器の温調器修理経験を買われて知人から依頼された農業関連の技術支援も始めた。知人は「OKプランニング」という農家を支援する会社を立ち上げ、農作物をはかりに載せると自動的に計量され、目標の重量の近くになると表示が点灯する自動計量器を製造している。この機器を使えば、作業者は点灯を確認するだけで適正量の農作物を袋に詰められ、出荷作業の負担を軽減できるようになっている。図1にその機器の写真例を示す。

精度は半導体用温調器の20分の1

<strong>図1:自動計量器「組み合わせハカリのテーブルコンビ」</strong> 図1:自動計量器「組み合わせハカリのテーブルコンビ」[クリックで拡大]

 図1は自動計量器の写真だ。「組み合わせハカリのテーブルコンビ」の名前で販売されている。3年ほど前だが最初にこの会社を訪問して、機器や基板を見せてもらったが、非常にシンプルなハードウェアだが、柔軟なソフトウェアで設計された機器だった。アナログ回路のレベルは3V程度で、5桁もの精度を表示していた。つまり、最小単位は5000分の3の0.6mV程度の電圧になる。

 今まで修理していた半導体用の温調器では1℃が25mV程度で、0.1℃では2.5mVになるがこの4分の1の精度を出す機器だった。しかし半導体の工場ではノイズがかなり大きいので、ノイズ対策をしっかり施しても、0.5℃程度の精度を保証するのが精いっぱいで、最小単位の電圧は12mV程度になる。『組み合わせハカリ』はシンプルなハードウェアだが、半導体用の温調器の20分の1の精度を出すようになっていた。この精度を現場で維持するのは、かなり難しいと思われた。

アナログ機器の精度を維持するには

 アナログ機器の精度を維持するには、センサーの接続部分を維持管理し、その信号を受けたアナログ基板には十分なノイズフィルターを設置して、オペアンプの増幅率を維持するために安定した電源を確保する必要があった。表示される温度精度が狂うと、製造に使う各種化学物質の温度調節が不安定になり生産されるICの歩留まりが低下してしまう。

 半導体の装置では高精度の温度を維持するため、高価な温度センサーのPT-100(測温抵抗体)を使用し、正負の電圧でオペアンプを動作させている回路が多い。しかし、負の電圧を正電圧から生成している回路も多く、5kHz程度の発振で電解コンデンサーに充放電したコンバート回路が多くある。この回路の電解コンデンサーは10年程度で劣化するために、オーバーホールする必要があった。コンバート回路の修理例を図2に示す。

<strong>図2:コンバート回路の修理例</strong> 図2:コンバート回路の修理例[クリックで拡大]

 図2は温調器の負電圧を生成する回路の修理例で、実装されていた電解コンデンサー2個を外して、代わりに劣化しないセラミックコンデンサーを実装したものだ。厳しい温度精度を保証するためにはしっかりとセンサーの接続を管理し、劣化する可能性が高い部品を交換することが必要になる。

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