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まだマイコンがなかった、50年前の回路設計の記憶Wired, Weird(2/5 ページ)

» 2025年06月24日 10時00分 公開

シンプルで良い回路......と思ったら、大きな落とし穴が

 なお、監視センサーが所定の時間に動作するように、R0とC0をリレーの復旧電圧に合わせて調整し、タイマーとしても利用していた。リレーを自己保持とタイマーという2つの用途に使っていて、シンプルで良い回路に見えるが、実は大きな落とし穴があった。リレーの復旧電圧がリレーの周囲の環境条件で大きく変動してしまうという欠陥を抱えていたのだ。

 リレーの復旧電圧に合わせてR0とC0を調整して実装しても、その後に検査するとタイマー値が変わって規格範囲に入らないことが多々あった。試行錯誤を繰り返すうちに3つの変動要因が見つかった。

 1つ目は、この基板には5つの監視回路がありリレーが5個実装されていたのだが、隣接するリレーからの磁界の漏れが復旧電圧に影響していたことだ。2つ目は基板の固定具合だ。動作試験を基板単体で実施しタイマー値を確認していたが、ケースに固定すると値が変わってしまっていた。基板をケースに固定することで、リレーのリードにテンションが加わりリレーの復旧電圧が変わって、タイマー値が変化した。3つ目は、機器の金属ケースのカバーの開閉状態でタイマー値が変わっていたことだ。金属ケースで密閉状態とそうでない状態で、リレー周囲の磁界に変化があり復旧電圧が変動してしまっていた。

 「リレーの復旧電圧は保証された範囲の値ではなく、最悪の場合は電源電圧の10%まで保持するリレーもある」と理解していれば、復旧電圧を利用した安易なタイマー回路を設計しなかったと思う。最初の仕事でもあり、先輩の設計を引き継いだ。かなり苦労したが良い勉強になった。

なぜ!? どこからか聞こえてくるラジオの音

 この回路を検証しているときに、不思議な現象を経験した。通電し回路の抵抗を調整しているときに、ラジオ放送のような音が耳に飛び込んできた。周りを見回しても、誰もいない。近くにラジオなどそれらしい機器もなかった。驚きつつよくよく確認すると、リードリレーから音が出ているのが分かった。

 12V電源を切ると音が聞こえなくなり、再び電源を入れると音が鳴った。リードリレーの接点が高速でオンオフを繰り返し、その音が音声のように聞こえていることが分かった。トランジスタが増幅状態になり、ラジオの電波を拾いリレーの接点から音が聞こえたようだ。

 翌日になって再確認すると音は聞こえなかった。この不思議な現象は「きっと回路の検証で苦しんでいる筆者にリレーが声援を贈ってくれたのだ」と当時は思っていた。

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