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コンデンサーは新品同様なのに ―― パワー不足のモータドライバー電源の修理(前編)Wired, Weird(1/2 ページ)

「コンデンサーの容量が少なく動作中の開閉がうまくいかず、オーバーヒートの症状があるそうでコンデンサーを調査してほしい」というモータドライバー電源の修理を依頼された。

» 2024年05月23日 10時00分 公開

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 ある顧客から「コンデンサーを調査する方法はありますか?」と相談があった。相談の真意はつかめなかったが、「もちろん、あります」と回答した。その後、顧客に聞くと「故障した機器のメーカーが言うにはコンデンサーの容量が少ないため、動作中の開閉がうまくいかず、オーバーヒートの症状があるそうで、コンデンサーを調査してほしい」ということだった。故障した機器がどのようなものか分からなかったが、取りあえず現物を送ってもらった。図1に示す。

図1:修理依頼主から送られてきたモータードライバーの様子[クリックで拡大]

 図1左は送られてきたモータドライバーに搭載されていた電源基板だ。図1右の通り基板の下に2200μF/450Vの電解コンデンサーが実装されていた。修理依頼品の回路構成からするとインバーターの電源部分と思われた。型名は「PCU-05」と記載され、インターネットで調べたところ、やはりモータドライバーの電源部分だった。長年使用されていたようで電源部全体に油やほこりが付着し変色していた。修理する前に油とほこりをクリーニングする必要があった。再びネット検索すると、電源の接続図が見つかった。図2に示す。

図2:接続図[クリックで拡大]

 図2の左側のPCUが電力制御ユニットで、右側のADUがインバーターだった。PCUの構成を調べたら電源の供給方法が分かった。図3に示す。

図3:電源の供給方法が示された図[クリックで拡大]

 図3でインバーターのPower電源や制御電源がPCU側で生成されていることが分かった。ここまで資料が見つかれば簡単に修理ができるだろう。PCU基板の下の電気部品の実装状態を確認した。図4に示す。

図4:PCU基板下の部品を確認した[クリックで拡大]

 図4で基板の下には大容量の電解コンデンサーと三相サイリスタが実装されていた。電解コンデンサーの容量をTester-TC1で測定すると2400μFで、ESRは0.35Ωだった。電解コンデンサーの劣化はなく、ほぼ新品に近い。今までの調査結果で顧客からの情報を再確認した。

 「コンデンサーの容量が少ないため、動作中の開閉がうまくいかず、オーバーヒートの症状がある」の意味は、電源の能力が下がったためにインバーターで制御している回転部分が動作できずに、オーバーヒートのアラームが出ると解釈できる。メーカーの見立ては、電源部分の電解コンデンサーが劣化したことが不具合の原因と思われる、ということだったのだろう。しかし、電解コンデンサーは劣化していなかった。読者も分かったと思うが、これでほぼ不良の原因が見えた。

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