VOPは、あるケーブルにおける信号の速度を、真空における光の速度(3×108m/s)に対する比で表したものである。VOPの値は、ケーブルの種類やメーカーによって異なる。カテゴリ5のケーブルのVOPは、通常約0.66である。従って、このケーブルを伝播する信号の速度は、0.66×3×108m/s=2×108m/sということになる。
VOPを用いれば、反射波の伝播遅延時間を測定することにより、故障個所までの距離を算出することができる。カテゴリ5のケーブルであれば、信号の速度が2×108m/sであることから、ケーブル1m当たりの伝播遅延を5nsとすることで、ケーブル長を算出することが可能である(伝播遅延は、信号が往復する時間であることに注意すること)。例えば、図2(b)は、90mのカテゴリ5のケーブルにおける反射波の伝播遅延を表している(開回路)。この場合、故障個所までの距離は次のようにして計算する。
つまり、伝播遅延を約900nsとすると、故障個所までの距離は約90mとなる。工場に設置済みの配線であれば、VOPによって、±1mの精度で検証が行える。
なお、ケーブルまたは故障までの距離が10m未満の場合、反射波は元の入力波に重なるかたちで観測される(図2(c))。伝播の往復遅延が入力パルスの周期よりも短い場合、つまり、《入力波形の周期(100ns)》≧《ケーブル長》×5ns/m×2の場合に、このような状況が生じる。
イーサーネットを用いた典型的なネットワーク構成の1つにスター型がある。スター型では、複数のポートを持つスイッチがノード間のリンクを提供する。それとは異なり、通常、産業用ネットワークは冗長リング構成をとる。この構成には、ケーブル配線が容易だという特徴がある。例えば、さまざまなセンサーが配置された製造ラインであれば、各センサーを一極集中型に配線するよりも、隣のセンサー同士をリング状につなぐほうが簡単だ。その際、ケーブルの長さはIEEE仕様に従って100m以下とする。
リング型構成では、帯域幅が制限される。しかし、Fast Ethernetなどはデータ転送速度が100Mビット/秒もある。それに比べると、オートメーションや制御で使用されるデータ転送速度は非常に低い。そのため、帯域幅の制約はまず問題とはならない。
図3に、制御層を備えた冗長リング構成のネットワークの例を示す。「リング」とはいっても、実際にはイーサーネットLAN内に完全なループを作ることは許されない。つまり、リングは必ず切断されている必要がある。さもなければ、システムはループ内でパケットの複製を転送し続けてしまい(無限ループとなる)、直ちにネットワーク効率が低下してしまうからだ。それに対し、「切断」または「管理」されたリンクを利用することで、ネットワークに冗長性を持たせることができる。リング内のいずれかのリンクが故障した場合でも、システムはその管理されたリンクを有効にすることで、リング構造を回復させることが可能になる。
産業用ネットワークのための標準化されたリング管理手法は存在しない。ただし、スパンニングツリーやラピッドスパンニングツリーのようなプロトコルを用いれば、ネットワークにおけるループを検出し、切断することができる。あるいは、VLAN(バーチャルLAN)のような機能を用いたその他の方法を採用する手もある。
図4は、VLAN実装を用い、スレーブノードを検出して順序付けを行う方法の例を表している。この例では、マスターノードが各スレーブノード(S1、S2、S3)に招待要求(invite request)を送信し、IDやアドレスといった重要なログ情報を取得する。各スレーブノードのVLAN設定を動的に構成することで、「既知」のノードが隣の「未知」のスレーブノードへと要求をリング内で引き渡していく。そしてこの未知のスレーブノードは、VLAN構成に基づき、受信した要求をプロセッサポートであるポート3へと転送する。
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