コントローラとして「HD44780」を利用した液晶ディスプレイ(以下、HD44780 LCD)は、組み込み装置用の英数字表示器として最も普及しているものである。その唯一の欠点は、HD44780のインターフェースがパラレルであるため、4ビットを1つの単位とするニブルモードでは6本のI/O端子が必要となり、8ビットを単位とするモードでは11本ものI/O端子を必要とすることだ。この欠点に対して、必要なI/O端子の本数を削減するための提案が、本コーナーでもこれまでにいくつか紹介されている*1) ,*2) ,*3)。
HD44780 LCDあるいは同等品を駆動するには、コストや基板スペースの面からは、ロジック回路よりもマイクロコントローラを使用するほうが有利である。また、そうすれば、機能がプログラマブルになるというメリットもある。使用できる最も小型な製品としては米Microchip Technology社製の「PIC10F」ファミリがあり、そのパッケージは6端子のSOT-23である。
図1の回路は、非同期9600ボーのRS-232プロトコルの単線シリアル通信によって、HD44780 LCDまたは同等品を駆動する。端子数に制限のある組み込みシステムでは重宝するだろう。マイクロコントローラIC1としては「PIC10F202」を使用しているが、PIC10Fファミリのほかの製品も使用できる。そのポイントは、使用するアセンブラプログラムを高度に最適化したことであり、所要ワード数が多くても256ワードで済む。通信速度については、IC1が内蔵するRC発振回路の周波数誤差が1%であること、また「表示消去」などの一部の駆動命令では1.6msの遅延が生じることから、9600ボー以上にするのは無駄である。
※1…Raynus, Abel, "Squeeze extra outputs from a pin-limited microcontroller," EDN, Aug 4, 2005, p.96.
※2…"Microcontroller provides low-cost analog-to-digital conversion, drives seven-segment displays," EDN, May 10, 2007, p.80.
※3…Niven, Rex, "RC lowpass filter expands microcomputer's output port," EDN, June 21, 2007, p.74.
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