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外部パルスに位相同期が可能な正弦波発生器Design Ideas

» 2008年12月01日 00時00分 公開
[Alfredo H Saab, Tina Alikahi(米Maxim Integrated Products社),EDN]

 アナログ回路のテストや校正、あるいは一般的な用途で用いる信号源として、周波数と振幅が正確で、全高調波歪(THD:Total Harmonic Distortion)の少ない正弦波信号が必要になることがある。加えて、その正弦波信号が外部パルス信号に正確に同期していることが条件となるケースも少なくない。正弦波は比較的簡単な回路で発生することができるが、振幅が一定で歪が少ないという条件を満たすのは容易ではない。特に、出力信号と外部パルス信号との位相同期を広い周波数範囲にわたって維持するのは困難なことだ。


図1 正弦波の発生回路 図1 正弦波の発生回路

 本稿では、こうした問題点を解決する正弦波発生回路を紹介する。図1の回路で得られる正弦波信号は、20Hzから20kHzの周波数範囲にわたって外部パルス信号に位相同期するとともに、ほぼ一定の振幅(表1)と、低歪が実現される。

 図において、IC1の「74HC4046A」(オランダNXP Semiconductors社製)は、VCO(電圧制御発振器)と位相比較器を備えるPLL(Phase Locked Loop)回路である。このICは3系統の位相比較器を内蔵しているが、図1の回路では、端子名がPC2OUTの出力だけを使用している。位相同期が掛かる入力信号の周波数範囲はVCOの出力周波数の全範囲となる。

表1 出力信号の周波数と振幅の関係 表1 出力信号の周波数と振幅の関係 

 IC2の「74HC4060」は汎用のバイナリカウンタであり、これは分周回路として働く。このIC2のRS端子に、IC1のVCO出力(VCOOUT)を入力する。このとき、IC2のQ6端子の出力はVCO出力周波数の1/64の周波数の矩形波になる。この矩形波をIC1のCOMPIN端子(フィードバック入力)に入力する。VCO出力の中心周波数はコンデンサC1と抵抗R1の値によって決まる。図の定数の場合、VCOINへの入力電圧の最小値から最大値までの変化に対し、VCOOUT出力周波数の範囲は20×64Hz〜20k×64Hzとなる。

 IC3の「MAX297」(Maxim Integrated Products社製)はスイッチドキャパシタ方式の低域通過フィルタである。そのカットオフ周波数は入力クロック(CLK端子)の周波数の1/50となる。IC3のIN端子にはIC2のQ6出力を抵抗R4とR5で分圧したものを、CLK端子にはIC1のVCOOUT出力をそれぞれ入力する。前述したように、IC3のIN端子に入力される信号の周波数は、CLK端子に入力される信号の周波数の1/64である。すなわち、このIN端子への入力信号の周波数はフィルタのカットオフ周波数よりも低く、通過帯域内に入る。一方、IN端子への入力信号の高調波成分は、CLK端子への入力信号周波数の1/50よりも高くなるので、低域通過フィルタの通過帯域外となり減衰する。結果として、第32次高調波まで含めて計算した歪(THD)は0.1%以下に抑えられる。

 このような良好な歪特性が得られるのは、フィルタ(IC3)への入力信号が、デューティサイクルが50%の矩形波であることによる。デューティサイクルが50%の矩形波を基にすれば奇数次の高調波しか生じず、高調波の最低次数が3次となり、高調波成分がすべてフィルタの遮断領域に入ることになるからだ。

 同期信号として周波数変調波を使用することも可能である。ただし、そうしたケースでは、同期追随速度(同期信号の最大変調周波数と最大変調深さに依存する)と周波数同期範囲(位相同期が維持される周波数範囲。IC1内部のPLL用低域通過フィルタの特性を設定するR2、R3、C2により決まる)の両方を満足するのが難しいことがある。例えば、図1で使用している定数のまま、周波数変調信号を同期信号として使用すると速度面で限界が生じる。こうしたケースの設計に関する詳細情報については、MAX297のデータシートなどを参照されたい*1)


脚注

※1…"MAX293/MAX294/MAX297 8th-Order, Lowpass, Elliptic, Switched-Capacitor Filters, Revision 2," June 2008, Maxim


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周波数 | 回路 | VCO | コンデンサ


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