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オーディオ用DACを用いた3相正弦波の生成回路Design Ideas

» 2008年12月01日 00時00分 公開
[SA Gonzalez,R Garcia-Gil,J Castello,JM Espi,EDN]

 ACモーターの駆動回路やアクティブパワーフィルタなどには、デジタル制御用のMPU/DSPを使った、3相の正弦波形を発生するデジタルシンセサイザが組み込まれていることが多い。この種の回路は、従来からのアナログ技術*1)またはDDS(デジタル波形合成)技術を用いて実現することができる。特に、DDS技術には、周波数や位相、増幅度の調整が比較的容易に行えること、安定であることといった優れた特質がある。


図1 3相正弦波の生成回路 図1 3相正弦波の生成回路 

 DDSによって3相正弦波形の合成を行う場合には、インターフェースとしていくつかのD-Aコンバータを備えるMPUまたはDSPが使用され、D-Aコンバータの分解能としては16ビット程度が必要になる。この方法には、多くの素子を使うだけでなく、ほかの構成部品やボード上の実装面積を多く要するという欠点がある。また、D-Aコンバータには、4、8、あるいは32ほどの出力チャンネルを備える、シリアル制御の多重出力タイプのものがあるが、チャンネル数と価格のバランスからは必ずしも効率的なものだとは言えない。

 ほかには、シフトレジスタやスイッチドキャパシタフィルタを使用する方法がある。しかし、これらの方法も多くの部品を必要とし、その上、振幅と位相の調整が難しいため、高分解能のDDSの実現手段としては不適当だ*2)

リスト1 cos関数のプログラム リスト1 cos関数のプログラム 

 こうした問題を簡単に解決するものとして、本稿では、オーディオ用(ステレオ)D-Aコンバータを使用する方法を紹介する。この種のD-Aコンバータは低価格で高品質なものが広く使用されている。本稿では、オランダNXP Semiconductors社のオーディオ用D-Aコンバータ「UDA1330ATS」を例にとる。この製品は、サンプリング周波数が8kHz〜55kHzで、デジタルオーディオ用シリアルデータインターフェースであるI2S(ワード長は16/18/20ビット)をサポートする*3)。こうした特徴が、構成部品の少ない3相用DDSの実現手段として適している。

 図1に示したのは、ARMベースのマイクロコントローラIC1「AT91SAM7X256」とオーディオ用D-AコンバータIC2(UDA1330ATS)、オペアンプIC3によってDDS回路を構成したものだ。

 リスト1はIC1で用いるプログラムの一部であり、必要な分解能のデータを発生するcos関数を記述している。また、IC1は、出力バッファが空のとき、割り込み処理ルーチンによってI2Sの連続フォーマットでデータを送信する。リスト2に示したのはそのためのプログラム(ハンドラ)である。

 IC2は、3相の信号のうち2相の信号VAとVBを出力する。これらの信号は2.5Vのオフセットを有した5Vppの信号である。3相目の信号VCは、VA、VBの2つの信号から生成する。その方法は、オペアンプIC3によってVA、VBの2つの信号を加算/反転増幅するというものだ。また、オフセットをキャンセルするために、D-Aコンバータの2.5Vの基準電圧を使う。増幅度を1倍とするために、IC3の周辺に用いる抵抗は、RF=RA=RB=10kΩとする。なお、抵抗のバラツキによるオフセット電圧を補正する必要があるなら、IC3の反転入力端子に可変抵抗を付加して調整する。図2に、図1の回路によって生成した3相正弦波の波形を示しておく。

リスト2 割り込み処理ルーチンのハンドラ リスト2 割り込み処理ルーチンのハンドラ
図2 3相正弦波の生成結果 図2 3相正弦波の生成結果 チャンネル1(黄色)とチャンネル2(水色)はD-Aコンバータの出力電圧。チャンネル4(緑色)は、オペアンプによって合成した波形である

脚注

※1…Dutcher, Al, "Inverters form three-phase VCO," EDN, Aug 2, 2001, p.102

※2…Perez-Lobato, Eduardo, "Three-phase sinusoidal-waveform generator uses PLD," EDN, Oct 12, 2006, p.104

※3…"Low-cost stereo filter DAC," NXP. http://www.nxp.com/pip/UDA1330ATS_5.html


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