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車載情報系LAN規格に新提案、通信速度は数Gbpsに

» 2010年07月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 車載LAN規格は、自動車の走行システムなどで用いられる制御系と、カーエンターテインメントシステムなどで用いられる情報系に分けられる。これらのうち、情報系では、高品位(HD)映像に対応した次世代規格として、通信速度が150メガビット/秒のMOST(Media Oriented Systems Transport)150や、800メガビット/秒の1394 Automotiveが広く知られている。しかし、2010年に入ってからは、SERDES(シリアライザ/デシリアライザ)技術を用いた、数ギガビット/秒(Gbps)の通信速度を備える規格に関する提案活動が活発化している。

欧州で採用進むFPD-Link ?

 米National Semiconductor(以下、NS)社は、車載情報機器向けの映像通信インターフェース規格としてFPD-Link IIの展開を強化している。

 FPD-Link ?は、同社が2006年に開発した映像通信用のシリアルインターフェース規格である。その特徴は大まかに分けて3つある。1つ目は、映像の送受信を行うための配線がシンプルなことである。使用する配線は、RGB方式の映像信号をシリアル化して伝送するためのツイストペアケーブルと、制御用信号を伝送するケーブルの2本で済む。2つ目は、通信速度が1.6Gbpsと高速なことである。この通信速度であれば、HD映像を、非圧縮かつ遅延なく通信することができる。3つ目は、10m以上のケーブル長でも良好な通信が可能なノイズ耐性を備えていることだ。例えば、自動車の後方に設置したカメラからの映像を、運転席の横に設置されているカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)の画面で表示するには、数m以上の長さのケーブルでカメラとカーナビを接続する必要がある。

 これまでに、NS社は、FPD-Link ?に準拠するICを、全世界で累計約700万個(350万チップセット)販売している。このうち、98%は車載向けであるという。ナショナル セミコンダクター ジャパンの社長を務めるJeff Waters氏は、「FPD-Link ?は、欧州の自動車メーカーからの要件に合わせて開発した規格だ。10m以上のケーブル長への対応などは、家庭用テレビのような用途には不要であり、実質的に車載向けの専用規格だと言える。自動車の後部座席で映画などを楽しむためのリアエンターテインメントシステムや、自動車の各所に設置した車載カメラを用いて運転を支援するシステムの開発については、欧州の自動車メーカーによる取り組みが進んでおり、FPD-Link ?の採用も広がっている。NS社の日本法人としては、欧州の自動車メーカー向けに車載情報機器を供給している国内のティア1サプライヤの開発を支援すべく、体制を強化しているところだ」と語る。

 現在、NS社は、2010年末を目標に、次世代のFPD-Link(以下、FPD-Link ?)の規格策定を進めている。FPD-Link ?は、MOST150や1394 Automotiveと同様に、映像信号と制御信号を含めて、1本のケーブルで機器間の接続を可能にするものである。加えて、1.6Gbpsよりもさらに通信速度を向上することや、FPD-Link ?のインターフェースに接続されている車載カメラ間の映像信号を同期させる機能などが検討されている。

ロームも参入へ

写真1クロック・エンベデッド・シリアル伝送トランシーバのデモ 写真1 クロック・エンベデッド・シリアル伝送トランシーバのデモ 

 ロームは、『人とくるまのテクノロジー展2010』において、FPD-Link ?と同様に、1本のツイストペアケーブルで機器間を接続できるシリアルインターフェース規格に関する展示を行った(写真1)。同社は、この規格に準拠した製品を「クロック・エンベデッド・シリアル伝送トランシーバ」と名付けている。

 同規格に準拠するトランシーバIC「BU17072KV」は、通信速度が最大2.7Gbpsで、車載用途にも利用できるよう長距離の通信にも対応する。また、CDR(Clock Data Recovery)回路を内蔵するので、外付けの基準クロック源を必要としない。「この規格に準拠した製品は、車載機器に加え、デジタルテレビなどの民生用機器にも展開する。競合する規格は、車載機器ではFPD-Link ?、民生用機器ではザインエレクトロニクスのV-by-One HSになる」(ローム)という。BU17072KVのサンプル出荷は、2010年末までに開始する予定である。

(朴 尚洙)

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