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バックアップ電池を利用可能なLED駆動回路Design Ideas

» 2010年08月01日 00時00分 公開
[Zhihong Yu (米Juno Lighting Group社),EDN]

 LEDは、効率が高く、制御方法が単純であることから、非常灯として広く利用されている。図1に示す回路は、3W〜6Wの非常灯用LEDを駆動するための回路であり、効率が高く、信頼性も高い。この回路でポイントとなっているのは、電池を用いたバックアップ機能を備えていることだ。

 この回路のメインの入力電圧には、12VACを使用している。これを全波ブリッジ回路で整流し、1〜2個のコンデンサで平滑化することでDC化する。このDC電圧をIC3のLEDドライバ(米Linear Technology社の「LT3517」)に供給することで、LEDを駆動する。


図1 LEDの駆動用回路 図1 LEDの駆動用回路 

 また、この回路は、LEDドライバへの給電経路をもう1つ備えている。IC2は電池の充電用レギュレータ(スイスSTMicroelectronics社の「PB137」)であり、BATT+とBATT−には12Vの鉛蓄電池を接続する。IC1は電源切り替え用のコントローラ(Linear Technology社の「LTC4412」)であり、これが鉛蓄電池の電圧と、12VACを基に生成されたDC電圧とを比較する。DC電圧が電池電圧より低くなると、IC1によって電源の切り替えが行われ、電池電圧がLEDドライバIC3に供給される。この電源切り替えの際には、わずかなスイッチング損失が生じる。ただ、IC2が電池の充電量が空にならないよう働くので、この損失は許容できるケースが多いだろう。

 12VACの供給には、通常のAC電源のほかに、電子トランスを利用する方法が考えられる。その場合、12Vのトランス出力の周波数が高いので、コンデンサC1、同C10として容量が10μFのものを使用する。それにより、電圧を高く保持できるとともに、力率も高くなる。

 IC1は、Q1とQ2のpチャンネルFETが、12VACから得たDC電圧と電池電圧とを切り替えるための理想ダイオードとして働く。このとき、pチャンネルFETによって生じる電圧降下はわずか20mV程度であり、通常のダイオードの電圧降下である0.7Vに比べるとはるかに小さい。また、AC電源がオフになると、IC1のGATE端子(5番端子)がローになる。そこで、同端子に別のpチャンネルFETを接続し、そこにAC電源がオフになったことを知らせる警報用LEDを設けるといった使い方も可能である。

 IC2は1.5Aの内部電流を許容し、入力電流は、抵抗R1によって制限される。電流があるレベル以上になると、トランジスタQ5がオンすることで同Q4がオフになり、IC2の充電機能もオフになる。

 LEDドライバのIC3は、AC電圧を整流したDC電圧または電池電圧を入力とし、インバータ式昇降圧型DC-DCコンバータとして動作する。抵抗R10は、LEDに流れる電流値の設定に用いる。

 IC3のCTRL端子(8番端子)は、アナログ調光端子である。これに抵抗R6とフォトレジスタRT1で構成する分圧回路を接続しておくことで、周囲が明るい場合に減光することができる。このようにすることで、消費電力の節減が可能になる。また、AC電源がオフのときにLEDを減光する必要があるなら、IC1のGATE端子にトランジスタまたはオプトアイソレータを接続し、それが、AC電源がオフのときにオンになるようにして、IC3のCTRL端子のアナログ信号レベルをロー側に下げるようにしておく。その結果、LEDを減光することが可能になる。

写真1 回路が動作している様子 写真1 回路が動作している様子 LEDは、非常灯用として十分な明るさで発光している。

 IC3のスイッチング周波数は、抵抗R7により1MHzに設定されている。この回路の効率は、AC電源で直接駆動した場合には82%、電子トランスを用いた場合には70%になる。

 図1の回路のうち、いくつかの部品を変更すれば、駆動可能なLEDの数を増やすことができる。例えば、IC3としてLT3517の代わりに、端子互換性を持つ「LT3518」(Linear Technology社製)を使用すれば、電流量を増やすことが可能である。出力電圧を高くする場合には、フィードバック用抵抗として働く抵抗R8と同R9の値を調整する。また、コンパレータの出力電圧をより安定させたい場合には、平滑化用のコンデンサC5としてより容量値の大きいものを使用する。試作の結果、最大6個のLEDを駆動することができた(写真1)。

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