次に、エンコーダの出力波形に話題を移しましょう。エンコーダはパルス波形(方形波)を出力する品種が多いのですが、正弦波を出力する品種もあります。用途ごとにいずれを使うかが決まり、パルスカウンターICやロジックIC、マイコンなどに接続して比較的容易に使えるのが、方形波出力タイプです。
正弦波出力を使う用途では多くの場合、逓倍(ていばい)回路を使って電気的に分解能を上げて使用します。逓倍回路を使ったエンコーダ回路は、非常に高い精度が求められる用途にも対応でき、分解能が数μm以下のリニアエンコーダなどはこの手法を採用した品種が多くあります。
一般的にエンコーダの出力回路の形式として、以下の3種類を用途ごとに使い分けています(図10)。1つ1つ概略を説明しましょう。
TTL出力は、エンコーダからの出力信号がTTLレベルで出力されます。TTLとは、トランジスタと抵抗を使って構成したデジタル回路の一種で、出力電圧値が規定されています。この出力回路の場合、プルアップ抵抗を図10のように導入し、信号の安定性を高めるのが一般的です。
当社のエンコーダは、ほとんどの品種でTTL出力方式を採用しています。利点は、非常に簡易な回路構成でロジックICなどに接続できること。欠点は、電流値が低いため配線長を延ばすと外来雑音の影響を受けやすくなり、信号の安定度が低下することがあります。
オープンコレクタ出力は、エンコーダのTTL出力にオープンコレクタ出力を挿入した回路です。図10のようにトランジスタを挿入することで、駆動できる電流値を増大させることができ、配線長をTTL出力よりも延ばすことができます。一般的に配線長は5m程度です。また、制御基板上にフォトカプラを使った絶縁回路を実装することが可能になり、電気的な耐性をTTL出力より高めることができます。一方で欠点としては、図10の通り部品点数がTTL出力よりも多くなってしまうことと、エンコーダ出力信号がオープンコレクタ出力部で反転するため、制御側で変換するといった対応が必要になることです。
ラインドライバ出力は、エンコーダの出力にラインドライバICを接続することで、エンコーダ信号を差動出力に変換した回路です。この方式は、RS-422規格としても知られています。ラインドライバIC/レシーバICは規格化されており、対応したICが当社を含む複数社から販売されています。
この出力回路の利点は、TTL出力やオープンコレクタ出力よりも配線長を飛躍的に延ばせることです。差動出力であるため、配線の途中で重畳してしまった雑音をレシーバIC側で相殺できるからです。一般的には200mまで配線長を延ばせます。欠点は、専用のドライバ/レシーバICが必要になることです。部品価格がオープンコレクタ出力よりも高くなる傾向にあり、しかも信号数が倍に増えるため、配線ケーブルが太くなるといった欠点もあります。
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