最後に光学式エンコーダを構成する発光素子、受光素子、コードホイールについて知っておくべき点をまとめましょう。
一般にエンコーダに使われる素子には「赤外LED」、「有色LED」、「レーザー発光素子」があります。いずれもそれぞれの特徴に応じて使われていますが、中でも赤外LEDは産業用途のエンコーダに広く採用されています。
図3に示した通り、光学式の透過型エンコーダでは拡散光を平行光にするため凸レンズを使います。ここで、光の波長が短ければ拡散が抑えやすくなりますので、波長がより短い側にある有色LEDが使われる場合があります。この観点で青色LEDが有利ですが、当社では自社開発した赤色LEDを1980年代から使っています。
レーザー発光素子はLEDに比べると格段に光の直進性が高いという特徴があります。一方でデメリットも多く、例えば価格、消費電流(発熱性)、寸法の観点で、採用されているのは高精度と高分解能が要求される分野に限られています。
一般に受光素子は素子構造としてはpn接合、pin接合があります。材料別でみると、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、インジウムガリウムリン(InGaP)などさまざまです。また、受光素子単体のベアチップや、アンプや周辺回路を集積したICで提供されています。前述の当社のマルチフォトディテクタアレイ方式では、フォトダイオード(受光素子)をアレイ状に配置することで、取り付けの容易性や出力の安定性などを高めています。
光の遮断/透過、反射/非反射を切り替える部品は、エンコーダには欠かせない基本的な部品です。当社では、コードホイールまたはリニアスケールと呼んでいますが、この他にもスリット円板、反射円板、コードスケール、単に円板、反射板といったように呼ばれています。
材質としては金属製、樹脂製、ガラス製の主に3つがあります。この中でも、金属製のコードホイールが使用温度や耐振動性、耐衝撃性、湿度耐性、コストといった点で優れており、さまざまな用途で幅広く使われています。ただ、使用数量でみると、樹脂製が最も多く使われています。これは、出荷数量が他の用途に比べて多い民生分野に採用されているからです。樹脂製のコードホイールは、金型や各種治工具をそろえるための初期投資が大きくなりますが、大量生産時に製品単価を抑えることができます。最後のガラス製は寸法の安定度が高いという特徴があり、高精度、高分解能の要求が高いエンコーダに採用されています。
今回は光学式コンコーダの構造や動作原理、特徴、出力回路などを解説しました。基本は単純ですが、分解能の高さと扱いやすさの両立が求められる市場動向の中、エンコーダメーカー各社がしのぎを削り、新たな検出手法や機能の開発に取り組んでいます。今回、当社が提案している方式も一部紹介しましたが、これもさまざまな手法の中の1つです。一長一短ありますので、光学式エンコーダの中でも使用する環境や用途に合わせて、最も適した方式を採用することをお勧めします。
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