光学式エンコーダの動作原理と特徴 〜「透過型」と「反射型」〜:エンコーダの基礎から応用(2)(1/5 ページ)
ひと言でエンコーダと言っても、幾つかの動作原理や出力形態があります。今回は、光学式と磁気/電気誘導式という2つの方式のうち、光学式エンコーダに注目し、基本的な動作原理や構成、使用するときに知っておくべき事柄を解説します。
→「エンコーダの基礎から応用」連載一覧
本連載では、回転したり水平移動したりするさまざまな機器/装置の移動方向や移動量、角度を検出する「エンコーダ」に焦点を当て、動作原理や特徴、多様なアプリケーションを実現する回路例などを紹介します。
前回は、エンコーダの役割や代表的なアプリケーションを取り上げました。ひと言でエンコーダと言っても、幾つかの動作原理や出力形態があります。今回と次回に分け、種類ごとの動作原理や長所、短所を分かりすく整理します。(EDN Japan 編集部)
エンコーダには動作原理が異なる幾つものタイプが存在しますが、大きく「光学式」と「磁気/電気誘導式」に分けられます。エンコーダの役割や用途、基本的な動作原理については、本連載の第1回「モーター制御に不可欠なエンコーダ、その多様な用途」を参考にしてください。まず、光学式エンコーダの性質(長所と短所)、得意な用途を紹介しましょう(表1)。
表1 光学式エンコーダの2つの実現手法 (クリックで拡大します)
【長所】
- 信号精度が物理的な寸法が決まっているスリットや反射部分で決まるため、磁気/電気誘導式よりも精度を高められる
- 周辺磁界による悪影響を受けないため、強い磁界を発生する用途でも使える。例えば、MRI(核磁気共鳴)装置、リニアモーター型アクチュエータなど
- 一般に、「インクリメンタル出力」であれば演算処理が必要ないため、磁気/電気誘導式と比較すると、高速対応が可能である
【短所】
- 分解能を高めるには、スリットの形成に物理的な限界がある。高分解能化するには、複雑な光学系や高精度な機構設計が必要になるため、高価格化、大型化してしまう
- 光を遮るようなホコリや油分などの汚染に弱い
- 安定した信号出力を維持するために発光素子にある程度の電流を流す必要があり、低消費電力化が難しい
【得意な用途】
- 信号精度が必要なサーボ制御(速度制御やベクトル制御)、精密制御
- 大径シャフトを使っているエレベータ用モーターや中空貫通軸モーターの制御(中空型エンコーダも製品化されているため)
- 高速に回転動作するモーター制御や関連したアプリケーション
- MRI装置の駆動や位置決め、大径モーターを採用している各種工業装置
一方の磁気/電気誘導式エンコーダの性質は以下の通りです。
【長所】
- 磁界を乱さなければ、ちりやほこりのある粉じん環境下でも使える
- 分解能を増やすときに物理的な制約が少ないため、光学式と比較すると安価に高分解能化できる
- スリットを伴う円板などを使わないため、光学式と同じ分解能であればより小型の品種を選択できる
- アブソリュート(絶対位置)を出力するエンコーダを比較的安価に製作することができる
- 光学式と比較すると使用する電子部品が少ないため低消費電力化しやすい
【短所】
- 強磁界の環境では使えない
- 光学式と比較すると信号精度が劣る
- 利用する磁石の形状の自由度が低いため、一般に中空型のエンコーダを製造するのが難しい
- 磁石の製造にレアメタルを使っているため、今後の価格変動が不透明
【得意な用途】
- ちりやほこりの多い環境で使う用途。例えば、糸くずの多い環境で使う工業用ミシンや編み機といった繊維機械
- 小型、軽量、高分解能といった特性が求められる用途。例えば、機器操作用ジョイスティックの動作検出
- 光学式と比べると電子部品の数を減らせるため、高い信頼性が求められる用途。例えば、メンテナンスを容易にしたい流量バルブ制御部分など
まず今回(第2回)は、光学式と磁気/電気誘導式のうち、光学式エンコーダに注目し、基本的な動作原理や構成、使用するときに知っておくべき事柄を解説します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.