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「ステッピングモーター」で学ぶエンコーダの活用法エンコーダの基礎から応用(最終回)(3/3 ページ)

» 2012年07月02日 15時40分 公開
[堀田智章,アバゴ・テクノロジー ]
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「リニアアクチュエータ」と組み合わせて使う

 一方のリニアアクチュエータは、図6のようにステッピングモーターやボールねじ、リニアガイド、リニアステージから構成されており、一般に各種工場内の製品搬送や、製品加工などの水平方向の移動に使用されています。

 モーターによる回転動作をリニアステージの水平移動に変換しているのは、1本の軸に通常のねじと同じようなねじ山が刻まれている、ボールねじと呼ばれる部品です。ねじ部分とリニアステージ部分が接触しているため、モーターが回転してボールねじを回転させると、ねじ回転にそってリニアステージを水平方向に移動させることができます。

図 図6 リニアアクチュエータの外観イメージ

 ステッピングモーターは1パルスで回転する角度が決まっており、一方でボールねじのねじ間隔も決まっています。例として、ねじ間隔を1mmすると、モーターが1回転しますとボールねじも1回転しますので、リニアステージは1mm動く事になります。その上で、使用するステッピングモーターが1パルス当たり1.8度回転すると仮定すると、200パルス送ると1回転するので、1mm水平に動くことになります。100パルスでは1/2回転なので0.5mm、1パルスでは0.005mmの水平移動となり、非常に簡単に水平方向への移動制御ができます。

 しかし、ここでもステッピングモーターの弱点が影響してきます。本当に狙った通りの水平移動をしたのかが分かりません。そこで、エンコーダを利用し、モーターの回転を監視します。まず、リニアステージにエンコーダを配置し、リニアガイド側に金属製のリニアスケールを取り付けます。エンコーダの出力信号は長いケーブルでコントローラに接続されますので、信号安定性を重視してラインドライバーICを介して、RS-422準拠でA、B、I相のパルス出力を差動出力としてレシーバICに伝送します。差動形式にすることで、伝送の途中で雑音が混入しても、雑音を相殺することができます。また、ラインドライバー出力を採用することでケーブル距離が長くなっても安定した出力を得ることができ、規格上は200mもの信号伝送が可能です。

 逓倍(ていばい)回路が搭載されたエンコーダを使えば、容易に分解能を上げることができます。例えば、基本分解能が約0.084mmのとき、4逓倍することで、約0.02mmピッチ相当のパルス信号を出力できます。さらに、エンコーダからのA相、B相出力信号の立ち上がり/立ち下がりエッジを使用することで4倍の分解能を作ることが可能で、外部分周回路によって約0.02mmの出力パルスを約0.005mmピッチに変換することができます。

ますます活躍範囲の広がる「エンコーダ」

 「エンコーダの基礎から応用」と題した本連載も今回が最終回です。本連載の冒頭で、「エンコーダはニッチな製品かもしれません」と説明しましたが、少しは興味を持っていただけたでしょうか。エンコーダが果たす役割は、今後も増えていくと思います。また、新しい機能が追加されたり、特性の向上したエンコーダの新製品も続々と製品化されています。本連載では、その一例として当社(Avago Technologies)が製品化している、逓倍(ていばい)回路を内蔵した3チャネル出力の反射型エンコーダICを紹介しました。新たな品種の登場で、これまでエンコーダを採用する機会がなかった分野への進出も始まっています。

 今回の連載で、皆さまのエンコーダに対する興味が増えたのでしたら、これ以上嬉しいことはありません。何かご不明なことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。


Profile

堀田智章(ほった ともあき)

1999年に日本国内のエンコーダメーカーに開発として入社し、エンコーダの機構設計を担当する。その後、小型エンコーダの機構設計および、電気設計に携わる。開発に携わったエンコーダ製品の量産立ち上げに向けた生産技術も担当した。2007年にアバゴ・テクノロジーに転職。フィールド・アプリケーション・エンジニアとして全国各地の顧客へ提案営業を行うとともに、エンコーダを活用するための技術アドバイスや図面作成、新製品の販促のための動作デモ機や販促キットの作成なども手掛ける。



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