フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの「Kinetis Eシリーズ」は、ARMのCortex-M0+を搭載した32ビットマイコンだ。5Vの電源に対応し、家電や産業機器の分野をターゲットとする。これらの分野では一般的に8ビット/16ビットのマイコンが使用されているが、性能や消費電力の点で優位性のある32ビットマイコンへの置き換えを進めるのが狙いだ。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2013年8月1日、ARMコアを搭載したマイコン「Kinetis」の新しいシリーズとして、32ビットのCortex-M0+を採用した「Kinetis Eシリーズ」を発表した。動作周波数は最大20MHzで、電源電圧範囲は2.7〜5.5V。電子レンジやエアコンなどの家電や、モーター、UPS(無停電電源装置)、回路ブレーカといった産業機器の分野をターゲットとする。電源電圧が5Vの8ビット/16ビットマイコンが一般的に使われているこれらの分野で、32ビットマイコンの置き換えを進めるのが狙いだ。
Cortex-M0+を搭載したKinetisとして「Kinetis Lシリーズ」があるが、同シリーズの電源電圧範囲は1.71〜3.6Vである。Kinetis Eシリーズは、電源電圧が2.7〜5.5Vと5Vに対応していることに加え、IEC61000-4-4やIEC61000-4-2といったESD/EMC規格に対応するなど、ノイズ耐性も強化している。最大64Kバイトのフラッシュメモリ、256バイトのEEPROM、最大4KバイトのRAMを内蔵する。
フリースケールは、「以前は、32ビットマイコンは8ビット/16ビットマイコンに比べて高価だったが、微細化などの技術により、32ビットマイコンを8ビット/16ビットマイコンと同等レベルのコストで製造できるようになってきた。32ビットマイコンを使えば処理が速くなるので、低消費電力の製品を実現できる。さらに、メーカーが8ビットや16ビットマイコンの新製品を出さなくなっているという背景もある。このため、家電や産業機器の分野で、32ビットマイコンへの置き換えが少しずつ始まっている」と述べる。
とはいえ、家電/産業機器向けマイコン市場は、独自のコアを搭載した国内メーカー品のシェアが圧倒的に高い。民生機器向けという印象が強いARMマイコンの採用には消極的な家電メーカー/産業機器メーカーが多かったという。「だが、ARMマイコンが民生機器分野で十分に実績を積み、その性能や信頼性が実証されていることや、国内のマイコンメーカーが低迷しているといった不安要素から、ARMマイコンの採用を検討するメーカーが増えている。今後は、家電や産業機器でARMマイコンの採用がさらに進むとみている」(フリースケール)。
Kinetis Lシリーズは180nmプロセスを用いて製造される。パッケージは、64端子QFP、64端子LQFPなどの4種類。64端子QFPの品種は既に出荷を開始していて、1万個購入時の単価は0.78〜1.13米ドルである。
フリースケールは、評価キット「FRDM-KE02Z」も併せて提供する。USBを介してPCに接続するだけで、すぐに評価することが可能だ。IARシステムズの「EWARM」、ARMの「MDK-ARM」、フリースケールの「CodeWarrior」に対応している。価格は12.95米ドル。
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