まず、低電力モード/ドロップアウトモードとして、パルスをスキップさせる主な制御方法を見ていきます。
A)ヒステリシスモード制御:ヒステリシスモード制御は、不必要なパルスは無視され、一度、出力電圧がしきい値以下に落ちると、単一パルスを出力します。この制御方法は、比較的低いリップル電圧が見込まれます。
B)バーストモード制御:バーストモード制御は、名前の通り、出力電圧がしきい値以下に落ちると集中的にパルスを生成します。これは、出力に高いリップル電圧を導く傾向があります。
C)コンスタント・オン・タイム/コンスタント・オフ・タイム制御:コンスタント・オン・タイム/コンスタント・オフ・タイム制御は、通常動作中でもスイッチングの周期は負荷に応じて変動します。補償回路やフィルタ処理が困難になるという不利な点があります。
では、ヒステリシスモード制御を行うFET外付けタイプの降圧型DC-DCコンバータ制御IC(TPS43340-Q1)を使った複合電源を例に挙げて、もう少し詳しく見ていきます。
図1は、低電力モードを行うためにパルススキッピング状態にあるこのデバイスの出力電圧をCH1(最上段の赤色の波形)と、出力電圧に対応するスイッチノード電圧をCH2(CH1下の赤色の波形)に示しています。なお、入力電圧は14V、スイッチング周波数は600kHzで、出力電圧は5Vになっています。
まず、ヒステリシスモードでは、1つのパルス(Phase-Node/図1中赤色の波形)を生成します。この時のサイクルタイムは、負荷によって決まります。パルス幅は、選択されたスイッチング周波数に依存します。なお、周波数が低いほど、パルス幅は長くなります。
スイッチング周波数と負荷条件の組み合わせによっては、出力電圧をしきい値以上に到達させるために2つ以上の連続的なパルスを生成させる必要があります。
低電力モードでは、出力コンデンサの電流は、小さな出力リップル電圧としてゆっくり収束していきます。ですので、この場合のリップル電圧は、多くのアプリケーションで問題には、ならない範囲に収まります。例に挙げたデバイスでは、リップル電圧は約30mV程度になっています。このデバイス以外のほとんどのデバイスは、低電力モードの場合、あらかじめ設定された周波数を維持せず、負荷に依存して、パルスの継続時間をマイクロ秒の範囲からミリ秒や秒に近い長さへと切り替えます。この例の場合でも、150μ秒(6.7KHz)となっています。
予測できない周波数(あるいはバーストモード時の繰り返しパルス)が懸念されますが、軽負荷で適切なレイアウトにより、それは通常は、問題になりません。
なお、低電力モードを搭載するデバイスのほとんどは、低電力モード機能の有効/無効を選択できるようになっているため、問題が生じる場合は、無効化できます。図2は、上の例と同じ条件で、低電力モードを無効にし、連続モードで動作させた場合の様子です。リップル電圧は、おおよそ20mVpp程度まで抑えられていますが、スイッチング損失は、かなり大きいと推測されます。
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