キーサイト・テクノロジーは、アナログ帯域が最大20GHzの広域帯信号を発生して、最大4チャネル出力できるモジュール型任意波形発生器「M8195A」を発表した。サンプリングレートが最大65Gサンプル/秒(Gsps)。「次世代コヒーレント変調」や「PAM、DMTの多レーン出力」などへの対応を可能とする。
キーサイト・テクノロジーは2014年9月9日、アナログ帯域が最大20GHzの広域帯信号を発生して、最大4チャネル出力できるモジュール型任意波形発生器(AWG)「M8195A」を発表した。サンプリングレートが最大65Gサンプル/秒。長距離光通信、次世代のクラウド通信やワイヤレス通信、防衛用レーダ機器などの研究開発、および物性研究などの用途に向ける。
M8195Aは、従来製品の特長である優れた信号品質に加えて、より高速性を追求したAWGと位置付ける。サンプリングレートは最大65Gサンプル/秒と高速で、帯域幅は20GHzと広域だ。これらの特性は競合する現行製品に比べて3割あるいはそれ以上も優れているという。その上、1台のAWGで出力は4チャネル備えている。最大5スロット収納できるAXIeシャーシを利用して、M8195Aモジュール4台と同期用モジュールを組み合わせることで、最大16チャネルまで同期の取れた信号を発生させることが可能となる。
M8195Aは、波形メモリとして最大16Gサンプルを搭載することができる。出力振幅は1Vp-p(2Vp-p差動)、出力範囲は−1〜3.3Vである。ジッタはRJrms200fs以下に抑えている。
M8195Aは1チャネル、2チャネル、4チャネルのモデルがあり、価格(税別)は1チャネルモデルで950万円、2チャネルモデルで1050万円、4チャネルモデルで1600万円となっている。
PC側からM8195AをコントロールするためのソフトウェアやM8000 BERT(ビット誤り率測定器)ソフトウェア、X/Y偏波に対してI/Q変調を設定したり、ナイキストフィルタリング設定に対応したりする光通信向けソフトウェアなども用意した。MATLABやLabVIEW、C++で作成した信号もダウンロードして利用することができる。
同社はM8195Aがターゲットとする市場の一例として、「コヒーレント長距離光通信」、「高速デジタルインタフェース」、「広帯域ワイヤレス通信」および、「汎用研究/防衛」を挙げた。
職務執行者社長を務める梅島正明氏は、「M8195Aは、これまでの“不可能”を“可能”にするAWGである」と話す。その一例として次世代通信ネットワークの技術進化と、測定器への要求を挙げた。長距離光通信は100Gビット/秒から400G/秒〜1Tビット/秒へ向けて、高速かつ複雑な変調が要求される。クラウドネットワークでは100Gから400Gイーサネットへと向かい、PAM4/PAM8、DNTといった複雑な変調方式に移行しつつあるという。「こうした通信ネットワークのテストや評価を可能とするのが、高速、広帯域、多チャネルに対応できるM8195Aである」と述べた。
M8195Aは、DSPを組み合わせた波形メモリ、65Gサンプル/秒を実現したD-Aコンバータ、および20GHzのアナログ帯域を実現するアンプなど、コアとなるデバイスを実装している。測定器の性能を左右するこれらのコアデバイスについては、自社で開発/製造できる体制を整えているのも同社の強みである。2014年8月1日に新会社としてスタートした同社だが、引き続き「コアデバイスの開発には積極的に投資していく」(梅島氏)方針である。
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