投稿された情報から、「一次電源の電圧が低すぎて出力側に十分な電圧が出ていないのが動作不良の原因だ」と判断した。2個の電解コンデンサが直列接続されていることが大きなポイントで、AC100VとAC200Vを切り替えて接続する回路が写真で辛うじて確認できた。つまりこの電源基板には電源の自動切換え回路があるが、これが機能しないためAC100Vを接続したときの整流電圧が低いために二次側の電圧が不足しているはずだ。
この電源の整流方式はAC電源のレベルを判定してAC100Vでは倍電圧整流 AC200Vでは全波整流されていると考えられる。整流方式の切り替えは電解コンデンサの下にあるTH1と思われた。TH1の型名を投稿者に確認してもらったらトライアックでBTA16-600BWだった。BTA16-600BWのデータシートの一部を図2に示す。
図2のトライアックはG端子に数Vの電圧が印加されればT1とT2が双方向でオンするデバイスだ。これは交流のスイッチで照明の明るさを調整する用途によく使われる。
これで切り替え方式であることが分かった。恐らく不具合部分は図1のトライアックTH1の下部に実装されているIC1を中心にしたアナログ回路の電圧判定回路にあり、これが機能していないようだ。しかし、この回路を修理するには投稿者の技量や設備では少し無理があると思われた。
投稿者へ使用する電源電圧を尋ねたら「AC100Vでしか使わない」ということだった。これなら倍電圧整流回路のみで使用すれば良い。トライアックのT1,T2を短絡することを提案した。これで整流回路が倍電圧整流になり、一次電圧が上がって、出力は正常になるだろう。
念のため整流回路の配線の接続の確認を依頼した。確認する内容は、直列に接続された電解コンデンサの中点にT1かT2のいずれかがつながっているかどうかだ。投稿者から「確かに接続されている」と回答があった。これで、T1とT2の短絡で大丈夫だという確信が持てた。
電源切り替え回路の参考回路を図3に示す。この図面は以前に報告したATX電源の修理の図面を流用した。
図3で赤のジャンパーが接続されていなければ、全波整流動作になる。赤のジャンパーが接続されていると、図3の上のAC端子がプラスのときは、下側の電解コンデンサが充電され、下のAC端子がプラスのときは上の電解コンデンサが充電される。これを直列に接続することで倍電圧の整流電圧になる。
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