過渡現象問題を解く時に必須となるラプラス変換/逆変換をSpice上で行うにはラプラス素子を用いて実行する方法がスマートです。今回から2回にわたって、いくつかのツールを使ってラプラス素子について説明、検証をしていきます。
過渡現象問題を解く時に必須となるラプラス変換/逆変換をSpice上で行うにはラプラス素子を用いて実行する方法がスマートです。しかし、ラプラス素子はSpiceが商用ツールになってからツールベンダー各社が独自に追加した拡張機能です。そして、独自に拡張されたが故にツール毎に操作性や調整項目などに微妙な差があり、その振る舞いも多少異なっています。
今回から2回にわたって、PSpice、LTspice、TopSpiceなど動作可能な手持ちのいくつかのツールを使ってラプラス素子について説明、検証をしていきます。(他にも多くの商用ツールで動作可能と思います)
なお、ここではラプラス変換/逆変換自体には説明上の最低限度しか触れませんのでご了承ください。
あなたはLやCを含む回路の過渡応答を求める時にどのような手法を用いますか?
普通、このような回路の過渡応答を求める場合は変数について微積分方程式を立て、この式を解いて過渡応答を求める手法を用いることと思います。
しかし、2次までの系であれば直接微分方程式を解くことも容易ですが、より高次な微分方程式を直接解くことは数学上のテクニックが必要で容易とは言えません。
より汎用的な解析手法として前回説明したアナログ・コンピュータもありますが、このような場合にはラプラス変換を用いて微積分方程式を代数方程式に変換し、解いた後で時間軸の解に戻す手法がスマートです。
微積分方程式⇒ラプラス変換⇒代数方程式⇒
代数解⇒ラプラス逆変換⇒時間軸の解
このラプラス変換/逆変換のイメージは誰の言葉かは忘れましたが次のように考えると良いでしょう。
この国の言葉では解けない問題がある。しかし、魔法の国の言葉に変換すれば魔法使いの力で解くことができる。
魔法使いに解いてもらった後はこちらの国の言葉に戻せば良い。
魔法の国の言葉は比較的簡単なので誰にでも習得できる。
このラプラス変換によって代数方程式に変換された回路方程式は形式的には周波数特性を表す式になっています。時間→周波数領域への変換と言われるとフーリエ変換が思い浮かびますが、ラプラス変換はこのフーリエ変換をさらに発展させたもので1780年にラプラス*1)によって考案されましたがすぐには日の目を見ることはなく、1899年にヘビサイドが経験則に基づく演算子法を発表し、1926年にウィナー*2)によって演算子法がラプラス変換と結び付けられてから広く用いられるようになりました。
ラプラス素子とはこのラプラス変換/逆変換を行うためにSpiceに装備された素子です。この素子を用いることで周波数特性と過渡応答を同じ回路図で求めることができます。
*1)Wikipedia ラプラス変換(最終更新 2014年9月7日)より
*2)応用数学2(大日本図書)p140より
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