Rxテストでは、J-BERTが送信した信号パターンと、DUTがループバックしたパターンを比較してエラー測定を行うが、USB3.1ではこのエラー検出の方法が少し複雑である。USB3.1 Gen2は信号のエンコードに128b/132bを採用しており、データは132ビットごとの固まり(シンボル)で送信される。
また、Tx側とRx側のクロックは非同期かつSSC(Spread Spectrum Clock:周波数拡散クロック)が採用されているため、TxとRxのデータレートは一致しない。よって通信の際にタイミング調整が必要となるため、空っぽのデータである「SKP OS」を必要に応じて挿入することができるようになっている。そのためDUTからループバックされるパターンには、J-BERTが出力していない「SKP OS」が含まれる可能性がある。「SKP OS」はDUTの判断で挿入され、テストパターンとは関係ないので、エラー検出の対象から外す必要がある。テストの際には、ループバックされたパターンから「SKP OS」を取り除いて、残りのデータを132ビットずつ比較してエラー検出を行う必要がある。このようなシンボルごとのエラー検出の手法をシンボルエラー測定(SER:Symbol Error Ratio)と呼ぶ。
一般的なBERTだと1ビットずつ比較するため、SKP OSがランダムに挿入されると、エラー検出が正しくできない(SKP OS挿入の影響で、出力パターンと入力パターンが1ビットでも異なると実際には問題がなくてもエラーと判断する)こともあるので、測定者は注意しなければならない。
ここまでRxテストを実施するために必要な要件を述べてきた。実際にテストを行うためには、テスト条件に合わせてBERTの出力を調整し、DUTをループバックモードに設定し、一定時間エラーカウントをしてPass/Fail判定を行う、といった一連の作業を実施する必要がある。ただし、ここにも幾つかの課題がある。
まず、BERTをテスト用に設定・調整する作業が非常に複雑であるため、テストの自動化が必要である。また、コンプライアンス試験では周期ジッタの周波数とジッタ印加量の関係について、代表的な7ポイントしか測定をしない。そうなると、測定ポイントでは全て合格していても、それ以外の複数のポイント(周波数)で不合格、あるいは十分なマージンを確保できていないケースも考えられる。コンプライアンス・テストはPass/Fail判定だけを目的としているが、実際の開発現場で必要なのは、DUTの実力を評価することだ。特にコンプライアンス・テストにFailした場合のデバッグには、マージン評価が欠かせない。
こうした課題を解決できるのが、J-BERT M8020AおよびN5990A テスト・オートメーション・ソフトウェア・プラットフォームを使ったジッタ耐性試験である。ジッタ量や周波数をパラメータとして任意に設定し、受信機の実力値を評価することができる。J-BERTに内蔵のジッタ信号源は校正されており、また設定値を瞬時に変更できるため、正確で高速なマージン評価を実施できる。またN5990AがM8020Aの設定およびテスト作業を自動化してくれるため、正確で再現性の高いテストが可能となる。
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