電気電子回路のトラブルシューティングやデバッグは、温度計測プローブを重宝することが多い。今回は温度を計測して結果を外部の電圧計に出力する、数個の部品で実現できる単純なプローブ回路を紹介する。
図1に示す単純な回路は、電気電子回路のトラブルシューティングやデバッグに重宝する温度計測プローブとして機能する。実際に温度を計測するには、温度センサーであるIC1(Maxim社の「MAX6610」)にプローブを接続して使用する。この回路をプリント基板の計測対象箇所に組み込んだり、一時的に部品に貼り付けたりすることで、簡単に温度をモニターすることができる。
この回路でポイントとなるのは、抵抗R1、R2、R3である。これらの抵抗により、温度対出力電圧の感度を表1のように設定できる。
10mV/℃ | 1mV/℃ | 1mV/℉ | |
---|---|---|---|
R1(kΩ) | 68.1 | 68.1 | 68.1 |
R2(kΩ) | 2.8 | 2.8 | 19.6 |
R3(kΩ) | オープン | 2.21 | 3.32 |
注)各抵抗の誤差は±10%。 |
温度対出力電圧特性は図2のようになる。温度に比例して電圧が出力されるので、その値を適当なDVM(digital voltmeter:デジタル電圧計)やハンディタイプのDMM(digital multimeter:デジタルマルチメーター)によって表示すれば、すぐに温度を把握することができる。
図1の回路は、電源電圧3Vでの消費電流がわずか200μAであり、AA級アルカリ乾電池2個で駆動できる。リチウムボタン電池のCR2016を使用すれば、数百時間の連続動作が可能である。さらに、プッシュボタンスイッチを使用して計測時のみ電源を投入するようにすれば、数年間は電池交換が不要となる。
図3に示す温度誤差特性は、図1の回路と、白金抵抗式の標準的な温度センサーの計測値の差を表している。これは、両者を温度制御オイル槽に浸して得た結果である。この結果から分かるように、標準的な温度センサーに対する図1の回路の計測温度誤差は、−40〜125℃の範囲で4℃程度である(温度誤差などに関する詳細を知りたい方は、MAX6610のデータシートを参照されたい)。
計測精度への影響を考慮すると、プローブからプリント基板へ逃げる熱を最小限に抑える必要がある。従ってIC1と周辺素子への銅配線のパターンは、長く、薄くしなければならない。
一方、図1の回路をプリント基板の温度計測用センサーとして使用する場合には、温度計測プローブとして使用する場合とは少し異なる実装方法をとる必要がある。プリント基板に組み込む場合には、IC1とプリント基板の熱接触が良好でなければならない。そのため、IC1の各端子を広い面積の銅箔パターンに直結するか、極力厚く短いパターンで接続する必要がある。それによってプリント基板とIC1の熱伝達が良好となり、正確な温度計測が可能になる。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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