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オペアンプのダイナミック応答の検討(1) タイプ2補償回路の使用時アナログ回路設計(4/6 ページ)

» 2017年12月26日 11時00分 公開

FACTをタイプ2の補償回路に適用

 FACTを効率的に図2の回路に適用するために、最初にエネルギー蓄積素子C1とC2を検討します。それぞれの独立状態変数を検討します。つまり、互いに直列接続も並列接続もされていない状態で、これは2次システムに相当します。このようなシステムは、擬似静止ゲインがゼロでないと仮定して、次の形式で表現できます。

 2次システムの場合、分母が次の式に従うことを示すことができます。

 sに対応する係数は単純に、励起をゼロにして決定した複数の時定数の和に等しくなります。s2に対応する係数は、新しい表現τ12を導入するため多少複雑になります。この表現はC1を短絡で置き換えた状態でC2の端子から「見た」抵抗を意味します。一見すると謎めいた説明に思えますが、少し考えてみると解決は可能です。

 図3の回路を解決するために採用したパスに従うと、s=0に対応するシステムを分析できます。図8にこのパスを示します。分析の際に、Vrefが理想的な電圧源であり、そのダイナミック応答はゼロです(どのような変調を加えても、その電圧は固定電圧である)。このように、コンデンサーは小信号回路から自然に消失し、AC分析では短絡の形をとります。

図8:DC分析では、全てのコンデンサーは開路になり、オペアンプは開ループ構成で動作する

 オペアンプは、εと開ループゲインAOLの積に等しい電圧を出力します。反転入力ピンの電圧には、ローサイド抵抗Rlowerが関係しており、εはこのケースではゼロ以外の値です。

 この回路には2個のコンデンサーがあるので、2個の別々の時定数が存在します。C2が関係する最初の時定数を決定するには、励起信号をゼロに設定し、C1を回路から取り除いた状態でC2の端子から見た抵抗を決定します。変形の過程を図9に示します。

図9:最初の時定数にはコンデンサーC2が関係する。この端子間でみられる抵抗の値はいくらか?

 最初の例で検討方法が十分に機能していた場合、今回は電圧制御の信号源(つまりオペアンプ)が存在するので簡単なアプローチとはなりません。C2の両端でみられる抵抗を決定するために、テスト用電流生成源ITを接続できます。それにより、端子間に印加される電圧を決定できます。VT/ITを計算すると、求めようとしている抵抗値が得られます。電流源が存在する回路を図10に示します。記述できる最初の簡単な式にはが関係します。オペアンプの入力ピン間の電圧は、R1とRlowerの並列合成抵抗にかかる負電圧です。

図10:テスト用電流生成源を取り付けてC2の端子間で見られる抵抗を決定する (クリックで拡大)

 オペアンプの出力は、に開ループゲインAOLを乗算した値になります。したがって、

 式14式15に代入すると、次の式が得られます。

 VTは電流源に印加される電圧です。左側の端子にはマイナスのεが存在し、右側にはバイアスVFBが印加されます。電位差は次のようになります。

 式17からVFBを取り出すと式16の結果に等しいので、整理して次の式が得られます。

 抵抗は単純に次の式で表せます。

 したがって、最初の時定数τ2は、次の式で表せます。

 C1が関係する2番目の時定数を求めるには、図11に示す更新された回路図が必要です。結果は明白なので今回は電流生成源を取り付けません。C1の端子間でみられる抵抗は、R2を直列接続した場合のC2に対して既に決定されています。

図11:2番目の時定数は、R2を直列接続した場合にC2を駆動する抵抗値なので、すぐに決定できる

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